データサイエンティストの仕事内容。生成AIで変わったことと、11年変わらないこと
「データサイエンティストって、結局どんな仕事をしているのだろう」と気になっている方も多いでしょう。しかも生成AIが出てきてから、その仕事内容が今どうなっているのかは、さらに見えにくくなりました。
コードはAIが書いてくれる、分析もAIがやってくれる。それならこの職業はどこへ向かうのか。目指すかどうかを決める前に、実際のところを知っておきたいはずです。
そこで本記事では、<br>・データサイエンティストの仕事内容と、AIを「使う人」との違い<br>・生成AIで実際に変わった部分と、11年間変わっていない部分<br>・この仕事をするために何を、どの順番で身につける必要があるのか<br>についてわかりやすく解説します。データ職やAI職を選択肢として考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
「データやAIに関わる仕事に進みたいが、何から手をつければいいか分からない」という方は、リベルクラフトが運営するCraft Collegeへご相談ください。<br>⇨Craft Collegeの詳細はこちら
- データサイエンティストの仕事内容とは。AIを「使う人」ではなく「作る人」の仕事
- データサイエンティストが実際に扱う仕事内容。5つの問題の型と、増えた4つの技術
- 仕事内容が広がったことは、データサイエンティストの職務要件の項目数にも表れている
- 生成AIでデータサイエンティストの仕事内容は実際どう変わったのか
- 変わっていないもの。データサイエンティストの定義は11年間同じまま
- 生成AI時代のデータサイエンティストの仕事内容で、人が担っている判断
- データサイエンティストの仕事内容に必要な力を身につける積み上げ順
- まとめ
- ウェビナー資料(ホワイトペーパー)のダウンロード
- データサイエンティストを目指す学習は「Craft College」
データサイエンティストの仕事内容とは。AIを「使う人」ではなく「作る人」の仕事
最初に、この職業が何をする仕事なのかを定義から確認します。ここを曖昧にしたまま仕事内容の話に入ると、「AIを便利に使う人」の話と混ざってしまい、実態から離れていくためです。
データサイエンティストの定義
一般社団法人データサイエンティスト協会は、この職業を次のように定義しています。
データサイエンティストとは、データサイエンス力、データエンジニアリング力をベースにデータから価値を創出し、ビジネス課題に答えを出すプロフェッショナル
(参考:総務省「データサイエンティストの職種と育成」会議資料 p.24)
ポイントは後半です。データから価値を創出し、ビジネス課題に答えを出す。 データを触ること自体が目的ではなく、答えを出すところまでが仕事の範囲だと定義されています。
なお定義の中の「ビジネス」は営利活動に限られません。同じ資料の注釈では、社会に役に立つ意味のある活動全般を指すとされています。行政や医療の現場でデータを扱う仕事も、この定義の中に入ります。
AIツールを使う仕事と、AIの仕組みを作る仕事の違い
いま「AIを使う仕事」という言い方には、性質のまったく違う2つが混ざっています。

- AIを使う人:チャットに質問して、文章や資料の作成を手伝ってもらう。すでにある道具を使いこなす立場
- AIを作る人:企業のデータや業務に合わせてAIの仕組みそのものを設計し、動くものとして開発し、業務で使われ続けるところまで面倒を見る立場
データサイエンティストの仕事内容は後者です。前者は職種を問わず誰もが身につけていくスキルであり、この記事で扱う職業の話とは分けて考える必要があります。AIツールを使うことと、AIソリューションを作ることの区別をつけておくと、以降の話が読みやすくなります。
隣接する職種との違いも押さえておくと整理しやすくなります。データアナリストは既存のデータから示唆を出すところに軸足があり、データサイエンティストは仕組みを作って業務に載せるところまでを担う、というのが大きな分かれ目です。詳しくはデータアナリストとデータサイエンティストの違いで解説しています。
データサイエンティストの仕事内容を5つの工程で見る
「作る側」の仕事は、案件の中でおおむね次の順に進みます。
- 課題要件の特定:業務のどこに困りごとがあり、そのうちどれをデータで解くのかを決める
- データ整備・設計:必要なデータがどこにあるかを確認し、使える形に整える
- AI設計:どんなモデルや仕組みで解くのか、何をもって成功とするのかを決める
- AI開発:実際に動くものとして作る
- 運用改善・定着:現場で使われる状態にし、精度や使われ方を見ながら直していく
厚生労働省の職業情報サイト job tag も、データサイエンティストの仕事をほぼ同じ順序で記述しています。「分析対象となる業務の責任者にヒアリングを行い、分析の目標を決める」から始まり、「モデルが有効であれば、サービスとして実装する」で終わる流れです(参考:job tag データサイエンティスト)。
つまり、この職業の仕事内容は「分析する」の一言では収まりません。何を解くかを決めるところから、業務で使われ続ける状態にするところまでが範囲だと考えておくと実態に近くなります。
データサイエンティストが実際に扱う仕事内容。5つの問題の型と、増えた4つの技術
定義と工程を確認したので、次は実際にどんな問題を扱っているのかに降ります。抽象的な役割説明よりも、解いている問題の型を知るほうが仕事の手ざわりが伝わるためです。
昔から解いてきた5つの問題
業界を問わず繰り返し出てくる問題の型は、大きく5つに整理できます。データサイエンティストの仕事例として挙げられるものは、たいていこのどれかに当てはまります。

- 需要予測:過去の出荷や販売の履歴から、これからどれだけ売れるか、どれだけ必要になるかを見積もる
- 異常検知:設備の稼働記録や取引の記録から、通常と違う動きを見つける
- 画像検査:製品の画像から、傷や欠けなどの不良を判定する
- レコメンド:実店舗だけでなく、ECサイトや動画配信のようなオンラインのサービスで、その人に合うものを提示する
- 効果検証:ABテストや統計的な解析で、施策に本当に差があったのかを確かめる
いずれも生成AIより前から存在する問題で、いまも案件の中心にあります。
増えたのは仕事の種類ではなく、使える技術
ここ数年で新しく増えたのは、実は仕事の種類ではありません。増えたのは、使える技術のほうです。
- LLM(大規模言語モデル):言葉の意味を扱えるようになった
- RAG(検索拡張生成):自社の情報にもとづいて答えられるよう、データ基盤とAIをつなぎ込めるようになった
- AIエージェント:手順を分解して自律的に動かせるようになった
- マルチモーダル:文字以外の情報も扱えるようになった
扱えるデータが増えれば、価値を生み出せる場面も増えます。解く問題そのものが別物に置き換わったのではなく、手持ちの道具が増えたので、解ける問題が広がったというのが実態に近い説明です。
技術が増えて手が届くようになった3つの領域
具体的に、これまで手が出しにくかった領域のうち次の3つが扱いやすくなりました。
- 書き方がばらばらで構造化されていない社内文書:報告書や手順書のように、人が読む前提で書かれてきた文書。レイアウトが複雑な資料も扱いやすくなりました
- 担当者の頭の中にある判断:ベテランが経験で決めていた判断プロセスを言語化できれば、それを手順として再現できるようになりました
- 数値になっていない情報:紙の帳票や録音のように、これまで精度が出ずに扱いにくかったもの。デジタル化して構造化すれば、情報資産として使えるようになりました
大事なのは、これらが特定の業界だけの話ではないという点です。文字以外の情報を扱えるようになったということは、医療の画像でも、小売の棚の写真でも、同じ考え方が当てはまります。
仕事内容が広がったことは、データサイエンティストの職務要件の項目数にも表れている
ここまで「解ける問題が広がった」と書いてきましたが、これは現場にいる人間の感覚にすぎないのではないか、という疑問が残ります。そこで、業界団体が職務要件として定めている項目の数を見てみます。
スキル項目は572から845項目に増えた
データサイエンティスト協会は、この職業に必要なスキルを項目単位で定義したチェックリストを定期的に改訂しています。その項目数の推移が次のとおりです。
| 版 | 公表年 | 項目数 |
|---|---|---|
| 第4版(ver.4) | 2021年 | 572項目 |
| 第5版(ver.5) | 2023年 | 650項目 |
| 第6版(ver.6) | 2025年 | 845項目 |
(参考:第5版プレスリリース・第6版プレスリリース)
第5版から第6版で195項目、第4版からの4年間では273項目増えています。生成AIが広がった期間に、この職業に求められる職務要件が実際に厚くなったことが数字にも出ています。
統計・機械学習が不要になったわけではない
ここで気をつけたいのが、「新しい技術が増えた」を「古い技術は要らなくなった」と読み替えないことです。第6版の項目をカテゴリ別に見ると、話は逆になります。
データサイエンス力に分類される354項目のうち、最も多いのはモデルを作る技術(機械学習・予測・数理最適化)で110項目です。これは5つのスキル群を横断して見ても単独で最大のカテゴリでした。次いで確率や仮説検定といった科学的解析の基礎が55項目、データ可視化が36項目、非構造化データ処理が36項目と続きます(項目の内訳は公式に公開されているCSV版から集計)。
データサイエンティストに必要なスキルとして統計や機械学習が挙げられ続けているのは、そういう理由です。解ける問題が置き換わったのではなく、広がったと表現するのが正確なところです。
新しく積み上がった層
そのうえで、第6版では新しい層が加わりました。データサイエンスとデータエンジニアリングにまたがる融合スキル125項目の内訳を見ると、次のように分布しています。
- AIエージェント:26項目
- マルチモーダルAI:18項目
- AIガバナンス:18項目
- データガバナンス:16項目
- ロボティクス:15項目
- オントロジー:13項目
- そのほか、IoT・AIシステム管理・ナレッジ活用・インターフェース
自律的に動くAIをどう設計するか、文字以外の情報をどう扱うか、そして安全に使うためのルールをどう敷くか。この3方向が、従来のスキル体系の上に積み上がった形です。
生成AIでデータサイエンティストの仕事内容は実際どう変わったのか
職務要件が厚くなったことは分かりました。では、日々の時間の使い方はどう変わったのでしょうか。ここからは調査データをもとに、変化の中身を見ていきます。
業務での生成AI利用は3年で31%から74%へ
データサイエンティスト協会が会員向けに実施した2026年版の調査(2026年2月から3月にかけて実施・有効回答323名)では、生成AIを業務に利用している人の割合が次のように推移しています。
- 2023年:31%
- 2024年:60%
- 2026年:74%
さらに、AIを業務に組み込んだり活用推進を担ったりする側として関与している人は41%でした(参考:データサイエンティスト協会 会員調査2026年版)。使う側としてだけでなく、作る側・広げる側として関わる人が4割に達しています。
使い方はコードの作成とチェックが中心
では何に使っているのか。同じ調査の用途内訳が公開されています。
| 用途 | 割合 |
|---|---|
| ドキュメント要約 | 75% |
| プログラム作成 | 62% |
| 議事録作成 | 57% |
| 原稿作成 | 51% |
| チェック・デバッグ | 49% |
(参考:Data of Data Scientist vol.81)
議事録や要約は職種を問わず共通ですが、プログラム作成とチェック・デバッグが上位に来るのはこの職種ならではです。解析や開発を仕事にしている以上、コードを書く作業とその確認がAIとの分担に移っていくのは自然な流れといえます。
それでも完全に任せられるのは0〜20%
ここで一つ、楽観に振れすぎないための数字を挙げておきます。AI開発企業のAnthropicが公表した2026年のコーディング動向レポートでは、開発者が仕事の約60%でAIを活用している一方、完全に委任できるのは0%から20%にとどまると報告されています(参考:Anthropic 2026 Agentic Coding Trends Report)。

同レポートは、AIはすでに常時の協働相手になっているものの、効果を出すには設計と指示、能動的な監督、検証、そして人間の判断が要ると述べています。AIツールを提供している当事者が、自社に有利とは言えない方向の数字を出している点は、読むうえで参考になります。
重心は「作る」から「何を解くか決める」へ移った
この分担の変化は、仕事の重心にも表れています。データサイエンティスト協会が実務者を対象に行った調査(2025年7月実施・n=161の自己申告)では、直近3年で重要度が最も上がった領域として課題定義・アプローチ設計が33%で1位、次いで生成AI・AI利活用が32%と続きました。逆に最も下がったのはモデリング・アルゴリズム開発でした(参考:Data of Data Scientist vol.76)。
回答者数が多くない自己申告の調査なので数字をそのまま受け取ることはできませんが、現場の感覚とはよく合います。どうモデリングするのか、RAGの検索と生成をどう組み立てるのか。このアプローチの設計こそが案件の出来を決める部分になってきています。
あわせて、生成AIを業務やプロジェクトに適用して価値を出すこと自体も新しい仕事になりました。RAGの構築、AIエージェントの開発、社内のさまざまなデータをナレッジ基盤に仕立て上げるデータ基盤の構築、複数のLLMの精度検証と比較。いずれも数年前には存在しなかった仕事です。
データを整える仕事は消えていない
一方で、「地味な作業はAIが全部やってくれる」という話にはなっていません。データ変換ツールを提供するdbt Labsの調査(2024年10月から12月に実施・459名)では、勤務時間の大半をデータセットの整備や整理に使っている人の割合が57%で、前年の55%とほぼ変わっていませんでした(参考:dbt Labs, State of Analytics Engineering 2025)。
ただしこの調査の回答者はアナリティクスエンジニア・データエンジニア・データアナリストであって、データサイエンティストではありません。データ職全般の傾向として読むのが適切です。
そのうえで、この数字は次のように読めます。1件あたりの処理時間や整備時間は短くなっている一方で、そもそも扱えるデータの種類と量自体が増えている。 これまで扱えなかった社内文書や紙の帳票が対象に入ってきたのですから、整備すべき対象そのものが広がったわけです。技術が進んだからデータ分析の仕事が楽になった、と単純にはなりません。
とはいえ、これを後ろ向きに捉える必要はありません。人材育成を手がける実務者は、IPAの鼎談で次のように述べています。これまでもデータサイエンティストの仕事は価値創造であるべきだったが、実際にはデータ入力や修正、レポート作成のような単純作業に追われ、本来担うべき価値創造まで手が回っていなかったのが実態だった、という指摘です(参考:IPA DX SQUARE 鼎談)。
仕事が奪われたのではなく、本来の価値創造に使う時間が戻ってきた。 リベルクラフトが案件の現場で感じているのも、この感覚に近いものです。
ここまで生成AIで変わった仕事内容を解説しましたが、「自分にも課題定義の判断ができるのか」という方は、Craft Collegeへご相談ください。
Craft Collegeでは、現役のデータサイエンティストが1対1で伴走し、実務水準まで指導します。Claude Codeでのデータ分析、分析のアプリ化、社内文書に答えるAI(RAG)まで、作れる状態まで持っていけます。
以下のリンクからまずは詳細をチェックしてみてください。
⇨Craft Collegeの詳細はこちら
変わっていないもの。データサイエンティストの定義は11年間同じまま
変わった部分を見てきました。ここからは反対に、変わっていない部分を見ます。この職業を選ぶかどうかを考えるなら、動いている部分より動いていない部分のほうが判断材料になります。
2014年の定義文と2025年の最新スキル定義の定義文が一致している
データサイエンティスト協会が2025年に公表したスキル定義の第6版。その発表資料のスライド3には、この職業の定義文が掲げられています。そして脚注には出典として「データサイエンティスト協会プレスリリース(2014.12.10)」と明記されています(参考:第6版 発表資料)。
つまり、2014年12月に定められた定義文が、2025年の最新版でもそのまま掲げられているということです。項目は572から845へ作り替えて増やしたうえで、定義そのものは据え置かれています。
生成AIが登場して世の中が大きく動いた期間をまたいで、この職業が何をする仕事かという定義は動きませんでした。細かく見ると書き換わったのは1か所で、3つの力のうち「ビジネス力」が「価値創造力」になっただけです。データサイエンス力とデータエンジニアリング力の定義文は、そのまま残っています。
ミッション「データの持つ力を解き放つ」と仕事内容のつながり
協会が掲げるミッションは「データの持つ力を解き放つ」です。抽象的に見えますが、先ほど挙げた問題の型と並べると具体になります。
- 需要予測:眠っていた出荷履歴を、仕入れの判断に変える
- 異常検知:捨てられていた設備の記録を、故障の予兆に変える
- 社内文書に答えるAI:誰も読まないまま置かれていた規程を、現場の答えに変える
データはあるだけでは何も生みません。それを判断に変えるところがこの職業の仕事内容であり、その部分は11年経っても動いていない、という整理になります。
定義は動かず、道具だけが入れ替わってきた
道具のほうは、この間ずっと入れ替わり続けてきました。

- 表計算ソフトでの手作業
- Pythonとpandas(大量のデータの処理や集計を数行のコードで書けるようになった)
- Jupyter Notebook(書いたそばから結果が出るので、試行錯誤の速度が上がった)
- 生成AIによるコード生成
さらに時代をさかのぼれば、手書き、筆記用具、印刷、タイプライター、表計算ソフト、BIツール、ノートブック、RPAと続く長い系譜があります。生成AIも、その系譜の上にある新しい道具の1つです。
どれも、人の仕事を助けるために作られてきました。だからやること自体は変わらず、道具のおかげでより早く山を登れるようになっている、という捉え方をすると全体像が見えやすくなります。この職業がなくならないと言われる背景についてはデータサイエンティストの将来性でも解説しています。
生成AI時代のデータサイエンティストの仕事内容で、人が担っている判断
定義が変わっていないのなら、その中で人は何を担っているのか。ここが、この職業を目指すかどうかを決める一番の材料になります。
AIプロジェクトの失敗要因の1位は「解くべき問題の取り違え」
RAND研究所は、AIや機械学習の構築経験が5年以上あるデータサイエンティスト・エンジニア65名へのインタビューから、AIプロジェクトが失敗する根本原因を5つ挙げています。その1番目が、AIで解くべき問題を関係者が誤解している、あるいは正しく伝達できていないことでした(参考:RAND Corporation, The Root Causes of Failure for Artificial Intelligence Projects)。
現場の感覚としても、これはかなり多いパターンです。解くべき問題を取り違えたまま、技術的には正しく動くモデルを作ってしまう。動いてしまうぶん、気づくのが遅れます。
AIモデルは、間違っていても「それらしいアウトプット」が出てしまう
なぜ気づきにくいのか。Webアプリケーションとの違いを見ると分かりやすくなります。
Webアプリケーションは、想定外の動きをすればすぐ分かります。ボタンを押しても画面が変わらない、エラーが出る、といった形で表に出るためです。ところがAIモデルは、それらしいアウトプットが出てしまいます。 分析結果は出る、数値も出る。ただ、その数値が本当に正しいのかは、見ただけでは判断がつきません。
だからこそ、想定される動きになっているモデルを作れているかどうかを人が決められる状態にしておく必要があります。ここをAIに任せきったまま動かすことが、失敗の大きな原因になります。
この構図は、Web開発とデータサイエンスを並べると同じ形をしていることが分かります。
| Web開発で理解しておくこと | データサイエンスで理解しておくこと |
|---|---|
| 画面とサーバーのやり取り | どのデータを、どの粒度・期間で集めるか |
| 認証とセッションの扱い | 欠損値・外れ値・偏りの扱い |
| データの保存先とキャッシュ | データリーク(本来使えない情報が混入すること)や分布のずれ |
| バックアップとリカバリ | 評価指標とアルゴリズムの選定 |
| セキュリティ | 過学習・未学習の見極め |
| アラートとログの設計 | データドリフト(傾向の変化)への対応 |
| スケーラビリティ | バージョン管理の設計 |
どちらの側にも、専門的な知見を持ってAIに指示を出し、出てきたものに責任を持つという役割があります。たとえばデータリークが起きていることに気づかないまま進めると、検証の段階では精度がよいのに、実際に動かしてから精度が出ないという事態が起こります。知っている人でなければ指示もできませんし、そもそも気づけません。
仕組みを理解しておく必要がある4つの領域
「課題定義が大事」という話は、しばしば「技術は要らない」と読み替えられます。それは逆です。道具が強力になっても、仕組みを知らなければ組み立てられません。 具体的には、次の4領域について、それぞれ何を理解しておくかが問われます。

- 機械学習・予測モデル:なぜデータから予測ができるのか、モデルが学習しているものは何か、評価指標と検証の方法
- LLM:トークン(文章を細かく区切った単位)の管理、パラメータの管理、コンテキストとプロンプトの管理
- RAG:データ基盤をどう作るか、AIに参照させるデータをどう検索してくるか、エージェント的な動きをどうさせるか
- AIエージェント:複数のエージェントをどう組み合わせて構築するか
コードを書く部分はAIに任せられるので、すべてを自分で書ける必要はなくなりました。その一方で、仕組みに対する理解はむしろ重要度が上がっています。 かつては仕組みを理解したうえで自分で実装まで担う必要があり、いまより厳しい戦いでした。その点は多少楽になりましたが、仕組みを知らなければ組み立てられないという構造は変わっていません。
実験で分かった、人が補っている4つのこと
この点を確かめた実験があります。6業種17課題のデータ分析競技で、AI単独のシステムと、人とAIが協働するチーム(29チーム80名)を比較した研究です。最も良い結果は、人とAIが協働したチームから出ました。そこで人が補っていたのは、次の4点だったと報告されています(参考:AgentDS, arXiv:2603.19005)。
- うまくいかない原因の特定:AIは表面的な改善案にとどまりがちで、根本原因までたどり着きにくい
- データの意味づけと仮説の質を上げること:その分野の知識を分析に埋め込む
- 一見良さそうで実際には精度が下がる提案を却下すること
- 汎化性能と再現性の判断:その時だけでなく、いつでも安定して精度が出るように設計を一般化する
いずれも、仕組みを理解していないとできない判断です。逆に言えば、この4つができる人になることが、生成AI時代のデータサイエンティストの仕事内容の中心にあります。
データサイエンティストの仕事内容に必要な力を身につける積み上げ順
人が担っている判断が見えたので、最後にそれをどの順で身につけるかを整理します。順番には理由があり、飛ばすと後で戻れなくなります。
4段階の積み上げ

- データを扱えるようになる:現場のデータを読み、意味を理解し、使える形に構造化できる
- 統計的な解析と機械学習的な予測ができるようになる:なぜその結果になるのかを説明できる状態で扱う
- LLM・RAG・AIエージェントを扱えるようになる:仕組みを理解したうえで使う
- 組み合わせて自ら実装できるようになる:課題に合わせて設計し、動くものにする
4段目の「実装」は、すべて自分でコーディングするという意味ではありません。自分で書くというより、コードを書くAIをきちんとマネージすることが現在の実装の中身に近くなっています。指示を出し、出てきたものを検証し、直させる。その全体が実装です。
共通の指針は、仕組みを理解しながら、同時に手を動かして作れるようになることです。座学だけでも、手を動かすだけでも、どちらか片方では止まります。
土台を飛ばすと何が起きるか
順番を飛ばして、4段目だけをAIに任せる進め方もできてしまいます。何かデータがあり、AIに指示して実装させる。動くものは作れます。ただ、この進め方だけだと土台が脆くなります。
リベルクラフトが指導の現場で見ている限り、土台がある人とない人では、つまずいたときの結果がはっきり分かれます。土台がない人は、なぜこの精度になっているのか、なぜうまくいかないのかに直面したときに、原因が分かりません。「AIがそう実装したから」で止まってしまいます。
仕事としては、そこで止まるわけにはいきません。精度を上げてほしいと言われれば、上げなければならないからです。積み上げの順序は、行き詰まったときに戻る場所を作っておくためのものだと考えると分かりやすくなります。
未経験からこの職業を目指す具体的なルートは未経験からデータサイエンティストになるには、条件面についてはデータサイエンティストの年収でそれぞれ解説しています。
積み上げた先に残る成果物
学習を進めていくと、手元には次のようなものが残ります。就職や転職の場面では、これがそのまま説明の材料になります。
- データを分析して示唆を出したもの:何を見て、何を判断したかが説明できる
- 分析を誰でも使える形にしたもの:一度きりの分析ではなく、繰り返し使える仕組みにしたもの
- 業務にそのまま乗る仕組み:社内文書に答えるAIのように、現場で使われる形にしたもの
キャリアを考えるうえで効くのは、資格の数ではなくこちらです。何を作れるかが、そのままこの職業での立ち位置になります。
まとめ
本記事のポイントを整理します。
- データサイエンティストの仕事内容は、AIを使う側ではなく作る側の仕事。課題要件の特定からデータ整備、AI設計、開発、運用と定着までが範囲
- 昔から解いてきた問題の型は需要予測・異常検知・画像検査・レコメンド・効果検証の5つ。ここは生成AIの前後で変わっていない
- 増えたのは仕事の種類ではなく使える技術。LLM・RAG・AIエージェント・マルチモーダルが加わり、解ける問題が広がった
- 職務要件のスキル項目は572(2021年)→650(2023年)→845(2025年)と増えた。一方でモデルを作る技術は今も単独最大のカテゴリで、統計や機械学習が不要になったわけではない
- 業務での生成AI利用は3年で31%から74%へ。用途はプログラム作成とチェックが中心だが、完全に任せられるのは0〜20%にとどまる
- 仕事の重心は課題定義・アプローチ設計へ移った。ただしデータを整える仕事は消えておらず、扱えるデータ自体が増えた分だけ対象も広がっている
- この職業の定義は2014年から2025年まで据え置かれたまま。動いたのは道具のほうで、生成AIもその系譜の上にある
- AIモデルは間違っていてもそれらしい結果が出るため、仕組みを理解していないと誤りに気づけない。機械学習・LLM・RAG・AIエージェントの4領域は原理から押さえておく
- 学習は、データを扱う→統計と機械学習→LLM・RAG・エージェント→組み合わせて実装する、の順で積み上げる。飛ばすと行き詰まったときに戻る場所がなくなる
ウェビナー資料(ホワイトペーパー)のダウンロード
本記事の内容は、ウェビナー「データサイエンティストは、生成AI時代に何をしているのか」をもとに再構成したものです。当日使用した資料では、職務要件の項目数の内訳、生成AIで変わったこと・変わらないことの整理、Web開発とデータサイエンスの対比、学習の積み上げ順を、そのまま自分の学習計画に使える形でまとめています。
⇨ウェビナー資料のダウンロードはこちら
データサイエンティストを目指す学習は「Craft College」
データサイエンティストの仕事内容を知ったうえで次に困るのは、独学だとどこまで積み上げれば実務に届くのかが自分では判断できないことです。教材は世の中にあふれていますが、順番と到達点を自分で決めるのは簡単ではありません。
リベルクラフトが運営するCraft Collegeでは、現役のデータサイエンティストが1対1で伴走し、9ヶ月かけて実務水準まで指導します。受講後に作れるようになるのは、Claude Codeを使ったデータ分析、分析を動くアプリにすること、社内文書に答えるAI(RAG)の構築の3つです。受託開発の現場で実際に扱っている題材をそのまま教材にしているため、学んだことが仕事の形とずれません。
- データやAIに関わる仕事に進みたいが、何をどの順に学べばいいか分からない
- 独学で手を動かしてはいるが、実務で通用する水準に届いているか判断できない
- AIを使うだけでなく、自分で作れる側に回りたい
⇨Craft Collegeの詳細はこちら
この記事を書いた人
慶應義塾大学で金融工学を専攻。 卒業後はスタートアップのデータサイエンティストとして、AI・データ活用コンサルティング事業などに従事。 その後、株式会社セブン&アイ・ホールディングスにて、小売・物流事業におけるAI・データ活用の推進に貢献。 株式会社リベルクラフトを設立し、AIやデータサイエンスなどデータ活用領域に関する受託開発・コンサルティングや法人向けトレーニング、教育事業を展開。



