生成AI × Excelデータ分析:組織の学びを変える「ゼミ」の挑戦

株式会社Schooが法人向けオンライン動画学習サービス「Schoo for Business」の新機軸として提供する、参加型プログラム「ゼミ」。 その一貫として、大手企業様向けに実施された「生成AI活用×Excelデータ分析」のプロジェクトにおいて、株式会社リベルクラフトがカリキュラム設計・講師・課題制作を担当いたしました。

本記事では、株式会社Schooの中西様、藤井様、弊社代表の三好とともにインタビューを実施。本プロジェクトの立ち上げ背景や、なぜ「生成AI×Excel」だったのか、そして受講者の行動変容を促した「骨太な学習体験」の裏側に迫ります。

PROFILE

プロフィール

中西 孝之氏

法人事業におけるサービス「ゼミ」の商品開発・推進を担当。企業の組織開発や学習文化の醸成という観点から、クライアントの課題解決に向き合う。

藤井 友理子 氏

株式会社Schoo 「ゼミ」のプログラムディレクターとして、カリキュラムの企画・進行管理、受講生代表(ファシリテーター)連携などを担当。学習効果を最大化するための体験設計に携わる。

三好 大悟

株式会社リベルクラフト 代表取締役  データサイエンティスト

慶應義塾大学で金融工学を専攻。卒業後はスタートアップのデータサイエンティストとして、AI・データ活用コンサルティング事業などに従事。その後、株式会社セブン&アイ・ホールディングスにて、小売・物流事業におけるAI・データ活用の推進に貢献。
株式会社リベルクラフトを設立し、AIやデータサイエンスなどデータ活用領域に関する受託開発・コンサルティングや法人向けトレーニング、教育事業を展開。本プロジェクトでは講師および教材開発を担当。

動画学習の「その先」へ。組織を変える「ゼミ」の挑戦

三好 大悟(以下、三好): 本日はよろしくお願いします。まずは今回、リベルクラフトが支援させていただいたSchooさんの法人向けサービス「ゼミ」について、その立ち上げの背景や狙いをお聞かせいただけますか。2024年にスタートして約2年が経過したところかと思います。

藤井 友理子 氏(以下、藤井): Schooは2011年の創業以来、個人のお客様向けに「365日生放送で学べる」インターネット学習サービスを提供し、そのアセットを企業様の人材育成に活かす「Schoo for Business」を展開してきました。 「ゼミ」を立ち上げたきっかけは、動画学習だけではどうしても「動画を見ただけ」で終わってしまうという課題があったからです。特にコロナ禍を経て、対面回帰や人との繋がりの良さが見直される中で、ただその場限りのインプットで終わらせず、皆で集まって継続的な学習をしていくトレーニングサービスが必要だと考え開発しました。

三好: 通常のeラーニング形式の法人研修と、「ゼミ」の決定的な違いや強みはどこにあるのでしょうか?

藤井氏: 私たちは、Schooの生放送の特徴でもある「なるほど!」という瞬間を積み重ねることを大切にしています。 通常の研修でも「なるほど」と思うことはありますが、ゼミでは先生、受講生代表(ファシリテーター)、そして受講生同士というトライアングルの中で生まれる「共創的な学び」を重視しています。受講生代表と先生の掛け合いから生まれるちょっとした一言や、他の受講生の言葉から得られる発見など、相互作用によって「なるほど」を積み重ねていくことを大事にしています。

中西 孝之氏(以下、中西氏): 現在はハイブリッドで提供していますが、三好先生と実施しているような2ヶ月型のものはオンライン前提です。先生と受講生代表がいて、それを受講生の皆さんが見るという形がメインになります。

「組織開発」と「人材開発」の両輪を回す

三好:企業様からはどのような期待を受けて導入されることが多いのでしょうか?

中西氏: 実は、単純な「人材開発(スキルアップ)」というよりも、「組織開発」の文脈で選ばれることが多いんです。 今の日本企業は労働人口減少の中で、「今いる人材の生産性をどう上げるか」という課題に直面しています。会社として学んでほしいことはあるけれど、それ以上に「社員自らが選び取って成長してほしい」という要請がある。そうした「自律的な学習文化」を作るためのプラットフォームとして選ばれています。

私たちはこれを「学びのインフラ(いつでも学べる)」「学びのきっかけ(ゼミ)」「学びのフィードバック(業務接続)」という三層構造で提案しており、今回のゼミはこの「きっかけ」と「フィードバック」を担い、現場での実践(モビリティ)に繋げる役割を持っています。

藤井氏: 以前、私たちは「もらい火(学習の伝播)」という言葉を使っていました。 ゼミに参加した人たちが職場に持ち帰って「こんな宿題が出たんだけどどう思う?」と話したり、学んだことを紹介したりして広がっていく。個人のスキルアップだけでなく、チームや組織のスキルアップに繋がってほしいということをお伝えしており、そこがマッチしたのだと思います。

大手企業のリアルな課題。「手挙げ文化」とDXのジレンマ

三好:今回ご一緒させていただいた大手小売企業様の案件について、具体的な課題感を掘り下げたいと思います。当初はどのようなお悩みがあったのでしょうか?

中西氏: お客様は非常に歴史があり、以前から社員の自律性を重んじる「手挙げ文化」を大切にされている企業様でした。 DXやリスキリングの文脈でも、2023年頃からデジタルスキルの重要性を掲げ、RPAツール(Power Automateなど)の研修や社内コミュニティに取り組まれていました。しかし、その成果が思うように出ていなかったんです。「DXしなさい」と言われてツールを学んでも、現場の業務改善に直結しない。そこで「Schooさんならどう解決しますか?」とご相談をいただきました。

三好:そこで、当初はお客様から「Excel研修ができないか」という話が出たんですよね。

中西氏: ええ。現場の業務を見ると、やはりExcelが中心です。ただ、従来のExcel研修のように積み上げ式でやっても、また「習ったけど使わない」になってしまう。 そこでタイミングよく登場したのが「生成AI(ChatGPT)」でした。お客様も社内版GPTを導入しようとしていた時期でもあり、「ExcelとAIを掛け合わせたゼミができないか」という話に着地しました。

なぜ「生成AI×Excel」なのか? 現場の共通言語をハックする

三好: そこで「自動化(マクロ/VBA)」ではなく、「データ分析」をテーマに選んだのはなぜだったのでしょうか?

中西氏: 最初は「業務自動化」も検討しましたが、自動化ツールは「自分だけが楽になる」もので終わりがちで、チームへの展開(共有)が起きにくいという課題がありました。 一方で、この企業様は「チームワーク」を重視する文化です。コツコツ自分のスキルを上げるよりも、みんなでデータを読み解き、チームとしての意思決定を良くする方向性が合っていると考えました。 また、Excelスキルに自信がない人でも、生成AIという武器を使えば一気に成果を出せる「下剋上」が起きやすい。それが「データ分析」というテーマでした。

藤井氏: 「Excelで整理はできるけれど、そこから意思決定につながる提案ができない」という悩みは多くの現場にあります。ずっと整理作業ばかりして分析が終わらない。 AIを活用することで、スキルの壁を飛び越えて「仮説を持ち、議論を生む」人材になれる。その変化の振れ幅が一番大きいのが、このテーマだと考えました。

中西氏: それと、陳腐化しないもの、転用が効くものをベースにしたいという思想もありました。 AIがAIと仕事をするようにならない限り、僕らがデータをどう読み解くかという仕事はずっとなくならないと思うんです。なので、プロンプトエンジニアリングそのものよりも、「言語化しようよ」「問題発見をやろうよ」というポータブルなスキルを重視しました。

リベルクラフトを選んだ理由。「分析のバリューチェーン」を伝えるために

三好: そうした背景の中で、今回リベルクラフトにお声がけいただいた理由は何だったのでしょうか?

藤井氏: 理由は大きく3つあります。 1つ目はもちろん、三好先生がデータ分析やAIに関する書籍を出版され、実績があったことです。 2つ目の理由は、「骨太で手応えのある教材を作っていただける」という点でした。

以前、三好先生にご出演いただいたSchooの授業動画(※)を拝見した際、ハンズオンの内容が非常に実践的で、正直「難しい」と感じる部分もありました。でも、今回のゼミにはその「難しさ」が必要だったんです。簡単に答えが出る課題では、受講生同士の議論が生まれません。「やってみたけど分からない」という状態を経てこそ、フィードバックの瞬間に深い「なるほど!」が生まれるからです。

※ 三好 大悟 Schoo登壇授業
2023年11月8日出演『Excelで、意思決定を導く 〜ゼロから学ぶ数理最適化〜』:https://schoo.jp/class/10703
2025年12月19日出演『ChatGPTと一緒に学ぶ はじめてのExcelデータ分析』:https://schoo.jp/class/12254

三好: 今回は「かなり手加減なしの実践課題」にしましたね。

藤井氏: はい。そして3つ目の最大の理由が、「実務への転用」を強く意識されていた点です。 制作段階で三好先生が「データ分析のバリューチェーンを伝えたい」とおっしゃった言葉が強く印象に残っています。 分析という作業単体ではなく、課題設定から仮説、データ加工、可視化、そして提案という一連の流れ(チェーン)が見えている。実務のプロフェッショナルとして、現場を知っている先生だからこそ、AIというツールを使うだけでなく「仕事そのものを変える」話ができると確信しました。

中西氏: これからの時代、AIの使い方はAI自体が教えてくれるようになります。だからこそ、「なぜその分析が必要なのか」「上司を説得するにはどうデータを出すべきか」といった、人間ならではの泥臭い知恵や経験則を語れる「実務家の先生」の価値が、相対的に高まっていくと考えています。

思考の壁を突破する。あえて「先生がいない」グループワーク

三好: 実際のゼミは2ヶ月間、全3サイクルの構成で実施しました。特徴的だったのは、中間のグループワークには私が参加せず、受講生代表と受講生だけで進める形式だった点です。

藤井氏: はい。先生からの正解をすぐに教えるのではなく、受講生同士で悩み、共有する時間を意図的に設けました。受講生代表という、先生でも受講生でもない架け橋となる存在が進行します。 自分では「これでいい」と思っていたけれど、他の人のやり方を見て「もっとできるかもしれない」と気づく。あるいは、全員で壁にぶつかって「どうしてもここが分からない」という飢餓感を醸成する。そうして「思考の壁」を突破する準備をしてから、先生のフィードバックを受けることで、学習効果が最大化される仕組みです。

三好: フィードバック回も、事前に用意した回答を解説するだけではありませんでしたね。

藤井氏: そうなんです。例えば第1サイクルでは、皆さんが予想以上に生成AIのプロンプト(指示文)に苦戦していました。そこで急遽、先生に「AIとの付き合い方・考え方」に時間を割いていただきました。 「AIには小学生に教えるように指示するんだよ」といった先生の言葉に、画面の向こうで皆さんが大きく頷いているのが見えました。 逆に第3サイクルの「可視化」の回では、円グラフを使おうとする受講生が多い中で、「ビジネスの現場で円グラフは比較に向かない。棒グラフを使うべき」といった、プロならではの厳しい視点も入れていただきました。

「ただの作業」が「分析」に変わった。受講者に起きた変化

三好: 今回のプロジェクト、終了後の反響はいかがでしたか?

藤井氏: 定量・定性の両面で非常に高い成果が出ています。 アンケートでは、Excelスキルやデータ分析スキルへの自信が、ゼミ前後で大きく向上しました。例えば「数値の分析ができる」と答えた人が13%から40%に増えたり、生成AIの使用頻度も40%から60%超へと上がっています。 面白かったのは、関数を直接教えていないにもかかわらず、「関数のスキルが上がった」という回答が倍増(30%台→60%台)したことです。

三好: 興味深いですね。

藤井氏: 課題に取り組む中で、AIに聞きながら自分で関数を調べたり、使ってみたりした結果だと思います。まさに「自走」が始まった証拠ですね。 定性的なコメントでも、「実務でチャットGPTを分析手段として使い始めた」「チームに共有した」という声が多く寄せられました。「今までExcel作業だと思っていたものが、実はデータ分析の入り口だったんだと気づいた」という反応もありました。

中西氏: お客様の事務局の方からも、「こんなにポジティブな反応が返ってくる研修は珍しい」と評価をいただいています。 4,000名規模の社員様のうち、450名ほどが参加されましたが、終了後も「受けたい」という声が止まず、追加開催が決まるほどの熱量でした。受講生が「これ良かったよ、受けてきなよ」と同僚に推奨する動き、私たちが「もらい火」と呼んでいる現象が実際に起きています。受講生からすると、「Excelを使うこと」と「データ分析をすること」が繋がっていなかったんだと思います。それが今回、「こういう風にデータと向き合えばデータ分析していることになるんだ」と分かってもらえたのが大きいですね。

今後の展望:AI時代だからこそ際立つ「人間」の知恵

三好: 最後に、今後の展望についてお聞かせください。

中西氏: 生成AIの登場で、知識そのものは陳腐化しやすくなっています。しかし、業務の中で培われた知恵や経験、人間関係の中での調整力といったものは、今後も変わらず必要です。 Schooとしては、そうした「AI時代でも変わらない本質的な力」を、実務のプロフェッショナルである先生方と共に提供し続けたいと考えています。マイクロラーニングなどの機能拡張も含め、働く人々が自律的に学び続けられる環境を進化させていきます。

藤井氏: ゼミのコンテンツとしては、今回見えてきた課題である「仮説構築」に特化したゼミや、逆に「可視化・提案」に特化したゼミなど、より深堀りしたテーマにも挑戦したいですね。 「全体像は分かった、じゃあ次はここを極めたい」という受講生の意欲に応えられるような、骨太な企画をまたリベルクラフトさんとご一緒できればと思います。

中西氏:: ぜひやりたいですね。 ツールが便利になるほど、「何を解決したいのか」「どう伝えるか」という人間の意思が重要になります。先輩が言う「ここだけ押さえとけば大丈夫」というポイントを、先生として伝えていく。そこを鍛えるプログラムを、今後も一緒に作っていければと思います。本日はありがとうございました。

全員: ありがとうございました!

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この記事を書いた人

慶應義塾大学で金融工学を専攻。 卒業後はスタートアップのデータサイエンティストとして、AI・データ活用コンサルティング事業などに従事。 その後、株式会社セブン&アイ・ホールディングスにて、小売・物流事業におけるAI・データ活用の推進に貢献。 株式会社リベルクラフトを設立し、AIやデータサイエンスなどデータ活用領域に関する受託開発・コンサルティングや法人向けトレーニング、教育事業を展開。

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