AIエージェントの失敗事例に学ぶ。任せてよい仕事と任せてはいけない仕事の判断軸
「AIエージェントの事例を調べてはみたものの、自社のどの業務なら任せてよいのか判断がつかない」という方も多いでしょう。
しかし、他社の成功事例を眺めるだけでは、自部門の業務にそのまま当てはめられるとは限りません。同じ「AIエージェントの活用」でも、業種や業務が違えばリスクの大きさはまったく異なりますし、実際に任せ方を誤って事故に至った事例も公表されています。
そこで本記事では、 ・AIエージェントを任せて成功した事例と、任せて失敗した事例 ・事例に共通する、任せてよい仕事・任せてはいけない仕事を分ける4つの軸 ・どこまで任せるかを決める自律性の設計方法 ・自部門の業務に当てはめる5ステップ についてわかりやすく解説します。AI・DX推進を担当する管理職の方は、ぜひ最後までご覧ください。
「自社の業務のどこからAIエージェントに任せてよいか判断したい」という方はリベルクラフトへご相談ください。 ⇨リベルクラフトへの無料相談はこちら
AIエージェントの「事例」を見る前に押さえたい基礎
AIエージェントとは、指示を一度受け取ると、その後の判断・計画・実行までを自律的に進めるAIシステムです。従来のチャットAIが「聞かれたことに答える」だけだったのに対し、AIエージェントはファイルを読み書きし、複数のツールをまたいで作業を進め、成果物を仕上げるところまで自走します。定義や生成AIとの違いをより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
参照記事:AIエージェントとは。仕組み・種類・活用事例をわかりやすく解説
「任せられること」が量的に広がった結果、企業の現場では2つの動きが同時に起きています。ひとつは、任せすぎて事故につながるケースです。もうひとつは、怖くて何も任せられず、効率化が進まないケースです。どちらも根っこにあるのは同じ問題で、「何を任せて、何を任せないか」の線引きができていないことにあります。この線引きを、実際の事例から見ていきます。
任せて成功した事例、任せて失敗した事例
AIエージェントの事例を「成功した/失敗した」という結果だけで見るのではなく、なぜその結果になったのかという構造で見ていきます。

成功事例:判断が要らない繰り返し業務から任せる
AIエージェントの活用がうまくいっているのは、決まった手順を高頻度で繰り返す業務です。ある報告では、週次レポートの収集・集計・送信をAIエージェントに任せたことで、担当者の作業時間が週4時間から30分に短縮された事例が紹介されています(出典:note「AIエージェント活用の実例」)。
リベルクラフトでも、夜間バッチでレポート作成から可視化までをAIエージェントに自走させ、朝には結果を確認できる状態にする運用を実際に行っています。誰がどのモデル・スキル・外部連携をどれだけ使ったかをログとして全社で蓄積しており、間違いが起きたときに検証できる体制とセットで自走の範囲を広げているのがポイントです。
失敗事例:Air Canadaのチャットボット訴訟
一方で、任せ方を誤ると何が起きるかを示す代表的な事例が、Air Canadaのチャットボットをめぐる訴訟です。同社のカスタマーサポート用チャットボットが、実在しない忌引運賃の払い戻し方針(先に正規運賃で予約し、後から忌引運賃との差額を払い戻せるという案内)を生成し、それを信じた乗客が予約後に払い戻しを拒否されました。
乗客が提訴すると、Air Canadaは「チャットボットは別個の存在であり、自らの行動に責任を負う」と主張しましたが、カナダ・ブリティッシュコロンビア州の民事解決トリブナルは、サイト上の情報はチャットボットが生成したものであっても会社の責任であるとして、賠償を命じました(出典:BBC、Forbes)。
この事例が示す教訓は、業務をAIに任せても、間違いの責任は会社に集中するという点です。自動化は責任を減らすのではなく、集中させます。だからこそ、対外的な約束につながる業務ほど、任せ方を慎重に設計する必要があります。
国内でも起きている「任せすぎ」の事故
同様の構図は国内でも起きています。取引先へのメール送信を確認なしにAIへ任せた結果、誤った内容のまま送信されてしまった事例や、AIが存在しない社内規定を「参照した」と資料に記載し、それに気づかないまま使われてしまった事例が報告されています(社名は特定できないため、事例の型として抽象化しています)。
三好自身も、承認ゲートを設けていたはずのAIエージェントに長時間の自律実行をさせすぎた結果、ゲートごと飛び越えて送信されてしまった経験があります。自律実行の時間を長く取るほど、途中に置いたはずの確認ポイントが素通りされやすくなるというのは、実際に手を動かしてみて初めて分かる落とし穴です。
事例に共通する、AIエージェントに任せてよい仕事・任せてはいけない仕事を分ける4つの軸
ここまでの事例を振り返ると、共通するパターンが見えてきます。成功している業務は「間違えても被害が小さく、すぐ直せる」業務であり、失敗している業務は「間違えると影響が大きく、後から取り消せない」業務です。この違いを、感覚ではなく4つの軸で言語化します。

軸1 影響度(間違えたとき何が起きるか)
1つ目の軸は影響度です。同じ「文章を作る」という作業でも、社内向けの議事録の下書きと、顧客に送る正式な回答文書ではリスクの重さがまったく違います。誤りが金銭・法務・安全・顧客対応・対外発信に直結する業務は影響度が高く、人が最終判断を握るべき領域です。逆に、社内の下書き・要約・整理のように、誤っても人がすぐ直せて被害が小さい業務は、AIエージェントに任せやすい領域になります。
軸2 可逆性(間違えても元に戻せるか)
2つ目の軸は可逆性です。リスクを測るうえで最も重視される変数といえます。レポートの下書きやデータの集計のように、間違えても簡単にやり直せる業務は、元データが残っている限り任せやすい業務です。一方、送信・発注・支払・公開のように、一度実行すると取り消せない、あるいは取り消しに大きなコストがかかる行動は可逆性が低く、必ず人の承認を挟む必要があります。
軸3 検証コスト(合っているか確かめやすいか)
3つ目の軸は検証コストです。AIエージェントの出力が正しいかどうかを人が確かめる手間が小さい業務ほど、安心して任せられます。表のフォーマット統一や定型集計は目視ですぐに正誤が分かりますが、長文の事実関係や専門的な法解釈は、確かめること自体に専門知識と時間がかかります。先に挙げた「存在しない社内規定を参照した」事例は、まさに検証コストが高い出力を確認しないまま使ってしまったケースです。
軸4 説明責任(誤りの責任を誰が負うか)
4つ目の軸は説明責任です。Air Canadaの事例が示すとおり、AIエージェントに任せても、誤りの責任は会社に集中します。規制対応・契約判断・与信や採否の決定・対外発信のように説明責任が重い業務は、AIエージェントに丸ごと任せるのではなく、草案や候補出しに限定し、最終判断は人が持つべき領域です。逆に、責任の所在が軽い社内作業は、任せる範囲を広げてよい領域になります。
4つの軸は、任せやすい状態と人が握るべき状態が次の表のように対応します。
| 軸 | 任せやすい状態 | 人が握るべき状態 |
|---|---|---|
| 影響度 | 社内の下書き・集計 | 対外の約束・お金・安全 |
| 可逆性 | やり直せる(下書き・集計) | 取り消せない(送信・発注・支払) |
| 検証コスト | 一目で正誤が分かる | 裏取りに専門知識が要る |
| 説明責任 | 責任の所在が軽い社内作業 | 対外・規制・人事判断 |
4軸のスコアが低い業務は「任せる」、一部が高い業務は「AIが草案を作り人が確認する補助」、多くが高い業務は「人が主役」という3つのゾーンに、業務は自然に分かれます。「AIか人か」ではなく「どのゾーンか」で考えると、感覚ではなく軸で線を引けるようになります。
ここまでで4つの軸について解説しましたが、「自社の業務をこの4軸でどう採点すればよいか、自分たちだけでは判断しきれない」という方は、リベルクラフトへご相談ください。
リベルクラフトでは、AIエージェント導入前の業務棚卸しから、4軸によるリスク採点、次に紹介する自律性レベルの設計までを伴走支援しています。単に「任せる/任せない」を判定するだけでなく、承認ゲートの設計や監査ログの整備まで含めた運用体制の構築を、貴社の業務に合わせて具体化できます。
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どこまで任せるか。自律性を3段階で設計する
4軸で仕分けたら、次は「どこまで任せるか」を決める段階に進みます。任せる・任せないは0か100かの二択ではなく、自律性の段階で「どこまで」を調整できます。

人が承認してから実行する(Human-in-the-Loop)
もっとも制御が強い段階です。AIエージェントが提案し、人が承認・修正してから実行します。承認なしには何も起きないため、影響が大きい業務や、不可逆な行動を含む業務、任せ始めたばかりの新しい業務に向いています。
人が監督しながら自走させる(Human-on-the-Loop)
AIエージェントが一連の作業を自走し、人はダッシュボードやアラートで上から見て、異常や例外のときだけ介入する段階です。停止ボタンを必ず持っておくことが前提になります。速さと安全網を両立させる段階といえます。
完全自走・人は事後確認のみ
リアルタイムの監督なしで自走させ、人は事後のログ確認や抜き取り点検だけを行う段階です。高頻度・低リスクで、すぐに元へ戻せる業務に限って採用します。人の監督がない完全自律の運用は、信頼できる基盤がまだ整っていないこともあり、2028年ごろまでは全体のごく一部にとどまると見られています。
不可逆な行動の手前に置く「決定サマリー」と承認ゲート
自律性のレベルを上げていく際に効くのが、不可逆な行動の手前に置く承認ゲートです。送信・支払・公開といった取り消せない行動の直前で、AIエージェントに「①何をしようとしているか②なぜそれが最適だと判断したか③実行すると何が起きると見込むか」という決定サマリーを出させ、人がYesかNoかを判断します。
この設計であれば、人は中身を理解しないまま承認印を押す状態を避けられます。あわせて、AIエージェントへの制約は細かい手順ではなく「1件の支払いは一定額まで」「対外文面は送信前に必ず所定のチェックに通す」といった境界のルールで与えると、境界の内側は自由に動かしつつ、境界に触れる瞬間だけ人が出るという設計になり、速さと安全を両立しやすくなります。
自律性は最初から高く与えるものではなく、実績で確かめながら1段ずつ上げていくのが基本です。エージェント型AI全体の設計思想については、以下の記事でも整理していますので、あわせてご覧ください。
参照記事:エージェント型AIとは。AIエージェントとの違い・仕組み・業務活用例を解説
事例を自部門に当てはめる。5ステップの仕分けワーク
4軸と自律性レベルが揃ったところで、実際に自部門の業務へ当てはめる手順に落とし込みます。次の5ステップで進めます。
- 棚卸し:自部門の繰り返し業務を書き出します。特に「手順が決まっていて量が多い」業務を優先的に拾います。
- 採点:書き出した業務ひとつひとつを、影響度・可逆性・検証コスト・説明責任の4軸で高・中・低に採点します。
- 仕分け:採点結果をもとに、任せる・補助・任せないの3ゾーンに振り分けます。
- レベル決定:任せる・補助に入った業務に、自律性のレベル(人が承認してから実行/人が監督しながら自走)を割り当てます。
- 手順化:それぞれの業務に「間違えたときにどうするか(誰が確認し、どこで止め、どう直すか)」を決めておきます。
この5つを埋めれば、自部門の業務仕分けの下書きができます。実際に動かしてみると、同じ部門の業務でも任せ方がきれいに分かれることが分かります。

| 業務 | 影響度 | 可逆性 | 検証コスト | 説明責任 | 仕分け |
|---|---|---|---|---|---|
| 会議の議事録要約 | 小 | 戻せる | 低い | 軽い | 任せる |
| 経費精算のチェック | 中 | 戻せる | 中程度 | 中程度 | 補助 |
| 採用書類のスクリーニング | 中〜大 | 戻せる | 中程度 | 重い | 補助 |
| 顧客への正式回答 | 大 | 戻せない | 高い | 重い | 任せない |
同じ管理部門の業務であっても、任せ方ははっきり分かれます。議事録要約は人が監督しながら自走させてよい一方、経費精算のチェックはAIが不備を指摘し承認は人が行う補助にとどめ、採用書類のスクリーニングも候補整理まではAIに任せつつ合否の判断は人が行い、顧客への正式回答は草案をAIが作っても送信は必ず人が承認します。この仕分けは一度作って終わりにせず、実績を見ながら定期的に見直していくものです。
任せた後に整備しておく3つの備え
仕分けが終わったら、実際に任せ始める前に運用面で3点を決めておきます。
- 止め方:不可逆な行動(送信・発注・支払・公開)の手前に人の承認ゲートを置き、おかしいと思ったときに止められる停止ルートを用意します。
- 見える化:AIエージェントが何をしたかのログを残し、定期的に出力を抜き取りで点検します。任せきりにせず、上から見る体制を作ります。
- 直し方:誤りが見つかったときに、誰が・どこまで戻し・どう再発を防ぐかをあらかじめ決めておきます。
これは、新しい担当者に仕事を任せるときと発想は変わりません。任せる範囲・報告の仕方・困ったときの相談先を先に決めておくのと同じことを、AIエージェントに対しても行います。性能の高いAIエージェントを導入すること以上に、この運用設計が成果と安全の分かれ目になります。
まとめ
- AIエージェントの事例は、成功している業務ほど「間違えても被害が小さく、すぐ直せる」という共通点を持ち、失敗している業務ほど「間違えると影響が大きく、後から取り消せない」という共通点を持つ
- 任せてよい仕事・任せてはいけない仕事は、影響度・可逆性・検証コスト・説明責任という4つの軸で仕分けられる
- 任せる/任せないは0か100かの二択ではなく、人が承認してから実行・人が監督しながら自走・完全自走という自律性の段階で「どこまで」を調整できる
- 自部門への当てはめは、棚卸し→採点→仕分け→レベル決定→手順化の5ステップで進める
- 仕分けは一度作って終わりではなく、実績を見ながら段階的に任せる範囲を広げていく
事例を眺めるだけでは自部門の判断はできません。今日紹介した4つの軸を使って、まずは自部門の業務をひとつ採点してみることから始めてみてください。
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本記事の内容は、2026年9月開催のウェビナー「AIに任せられる仕事・任せられない仕事(Cowork時代の業務の切り分け方)」でも解説しました。当日のスライド資料はホワイトペーパーとして無料公開しています。
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AIエージェントの業務仕分け・導入支援は「リベルクラフト」
ここまで、AIエージェントの成功事例・失敗事例から、任せてよい仕事・任せてはいけない仕事を分ける4つの軸、自律性の設計方法、自部門への当てはめ方まで解説してきました。
事例を知ることと、自社の業務に当てはめて判断することの間には距離があります。
- 自部門のどの業務からAIエージェントに任せてよいか判断できていない
- 任せて事故るのも、怖くて何も任せられないのも避けたい
- 管理職やチームが自分たちで業務を仕分け、運用設計できるようになりたい
という方は、リベルクラフトへお気軽にご相談ください。
リベルクラフトでは、AI活用コンサルティングから、AIエージェントの開発受託、社内ナレッジ基盤(RAG)の構築まで、要件定義から本番運用までを一貫して支援しています。導入して終わりにせず、4軸によるリスク採点や承認ゲートの設計、自律性を段階的に広げる運用体制の整備まで伴走する点が特長です。

自社の業務のどこからAIエージェントに任せてよいか判断したいとお考えの企業は、まずは以下のリンクからお気軽にご相談ください。
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この記事を書いた人
慶應義塾大学で金融工学を専攻。 卒業後はスタートアップのデータサイエンティストとして、AI・データ活用コンサルティング事業などに従事。 その後、株式会社セブン&アイ・ホールディングスにて、小売・物流事業におけるAI・データ活用の推進に貢献。 株式会社リベルクラフトを設立し、AIやデータサイエンスなどデータ活用領域に関する受託開発・コンサルティングや法人向けトレーニング、教育事業を展開。



