AIによるデータ活用とは?分析との違いやデータ活用方法の選び方を解説
「社内にデータは貯まっているが、AIでどう活かせばいいのか分からない」
「そもそもデータの収集や分析をAIでできない」
と感じている担当者は少なくありません。
実際にさまざまな企業でAIの活用は広がっていますが、自社のデータをAIで分析・活用できている企業は多くありません。
そこで本記事では、
- AIによるデータ活用の定義と従来のデータ分析との違い
- 具体的にできること
- 自社に合った活用方法の選び方
- 必要なデータ・基盤・ツール
- 失敗しないためのポイント
までを解説します。AIによるデータ活用を実施したい方は最後までご覧ください。
「自社ではどの業務からAIを取り入れるべきか」「蓄積したデータで何ができるのか」と迷っている方は、リベルクラフトへご相談ください。
リベルクラフトでは、専門のデータサイエンティストが現場の課題と保有データを確認し、自社に合った活用テーマや導入の進め方をご提案。 売上・需要の予測から、文書の仕分け、社内情報を活用するRAGの構築まで、改善したい業務に応じた支援が可能です。
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AIによるデータ活用とは?
AIによるデータ活用とは、自社に蓄積されたデータをAIに学習・処理させ、予測・検知・分類・生成といった出力に変換し、業務の判断やオペレーションに組み込むことを指します。
ポイントは「分析して終わり」ではない点です。レポートを作ることがゴールではなく、
- その結果として発注数量が変わる
- 点検のタイミングが変わる
- 問い合わせ対応の時間が短くなる
といった業務側の変化まで含めて初めて「活用」と呼べます。
従来のデータ分析とAIによるデータ分析の違い
まず押さえておきたいのは、AIによる分析は従来のデータ分析を置き換えるものではないということです。両者は「誰がルールを決めるか」という点で役割が異なります。
従来のデータ分析は、人が仮説を立て、集計軸や閾値を設計し、その結果を解釈する進め方です。一方、AIによる分析は、人が明示的にルールを書き下せない複雑なパターンを、データそのものから学習させる進め方です。
| 観点 | 従来のデータ分析 | AIによるデータ分析 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 過去に何が起きたかの把握・説明 | 将来の予測、自動判断、生成 |
| ルールの決め方 | 人が仮説・集計軸・閾値を設計 | データからパターンを学習 |
| 扱うデータ | 主に構造化データ | 構造化+非構造化(文書・画像・音声) |
| 説明のしやすさ | 高い(計算過程を追える) | 手法により低い(別途、説明手法が必要) |
| 得意な問い | 「何が起きたのか」 | 「次に何が起きるか」「どう対処すべきか」 |
実務では、この2つを併用するのが前提です。KPIの定点観測やレポーティングはBIツールによる従来型の分析が最も速く、正確で、コストも低く済みます。
生成AIの登場でデータ活用のハードルは下がっている
2022年以降の生成AIの普及によって、データ活用の入口は大きく広がりました。従来はSQLやPythonを書ける人材がいなければ着手できなかった作業の多くが、自然言語での指示で代替できるようになったためです。
生成AIによって具体的に下がったハードルは、主に次の5つです。
- 自然言語でデータに質問できる
- コード生成の補助
- 非構造化データが分析対象になった
- 前処理の自動化
- 可視化とレポートのたたき台作成
総務省の「令和8年版 情報通信白書」でも、日本企業の生成AI活用は業務類型別に「議事録・メール作成補助」が約7割と最も高く、次いで「営業・販売」が約6割、「社内ヘルプデスク」が約5割と続いています。

出典:総務省
ただし注意したいのは、下がったのはあくまで「入口」のハードルだという点です。出力の正しさを検証する、業務フローに組み込む、権限やセキュリティを設計するといった工程は依然として残ります。
AIでデータを活用するとできる5つのこと
AIによるデータ活用は無限に見えますが、企業実務で成果が出ているパターンは、以下の5つにほぼ集約されます。
- 予測|売上・需要・顧客行動などの将来を予測する
- 異常検知・予兆検知|不正や故障を早期に見つける
- 最適化|人員・在庫・配送などの最適な組み合わせを導く
- 分類・抽出|文書やデータを自動で仕分ける
- 文書活用・RAG|社内データを検索・要約・回答に使う
予測|売上・需要・顧客行動などの将来を予測する
予測は、AIデータ活用のなかでも成果が定量化しやすい領域です。過去の実績データと、その結果に影響を与える要因を学習させ、将来の数値や確率を出力します。

例えば、
- 店舗別・商品別の販売数を予測して発注量や生産計画に反映する需要予測
- 解約しそうな顧客を事前にスコアリングしてフォロー対象を絞り込む解約予測
- 獲得直後の行動から将来の累積売上を推定して広告予算の配分に使うLTV予測
- 取引先の支払い遅延リスクを推定する与信・審査
など、適用範囲は広く、業種を問わず取り組みやすいのが特徴です。
学習に使うデータは、季節性を捉えるために最低でも2周期分、目安として過去2〜3年分の実績が欲しいところです。
ここで最も重要なのは、「予測を当てること」自体は目的ではないという点です。予測値が出ても、それを使って誰がいつ何を判断するのかが決まっていなければ、業務は1ミリも変わりません。プロジェクト開始時点で「予測値は発注担当者の画面に何時に表示され、担当者はそれをどう扱うのか」まで決めておくことが、成果につながる分岐点になります。
異常検知・予兆検知|不正や故障を早期に見つける
異常検知は、「正常な状態のパターン」をAIに学習させ、そこから外れた挙動を自動で検出する手法です。予測と並んで導入実績が多く、損失の回避額として効果を計算しやすいのが特徴です。

例えば、
- 振動・温度・電流などのセンサー値から故障の前兆をつかんで計画外停止を防ぐ設備の予兆検知
- クレジットカードの不正利用や経費精算の不正
- なりすましログインを見つける不正検知
- 製造ラインの検査画像から不良品を判別する品質異常の検知
- サーバーログやアクセスログの異常なパターンを捉えるシステム監視
などが代表例です。この領域が実務で扱いやすい理由の一つは、「異常データがほとんど無くても始められる」点にあります。
故障や不正は発生頻度が極端に低いため、正解ラベル付きの学習データを集めるのは困難ですが、正常時のデータは大量にあるため、「正常からの逸脱」を測る教師なし学習のアプローチが取れるのです。
最適化|人員・在庫・配送などの最適な組み合わせを導く
最適化は、限られた資源(人・モノ・時間・予算)を、条件を満たしながら最も効率よく配分する組み合わせを計算する手法です。予測が「どうなるか」を答えるのに対し、最適化は「ではどうすべきか」を答えます。

例えば、
- 必要人数の予測をもとに労務ルールや希望休を満たすシフト表を自動生成するシフト最適化
- 輸送コストと欠品リスクのバランスを取りながら拠点間の在庫を振り分ける在庫配分の最適化
- 時間指定・積載量・走行距離の制約下で最短の巡回ルートを導く配送ルート最適化
- 値引き幅や広告予算を利益が最大になるよう振り分ける価格・予算配分の最適化
などが代表的です。成功の鍵は、AIモデルそのものよりも制約条件を漏れなく言語化できるかにあります。
「深夜勤務の翌日は必ず休み」「この資格保有者が各シフトに1名以上」といった、現場では暗黙知になっているルールを、すべて数式・条件として書き出す作業が全体の工数の大半を占めるためです。なお実務では、予測モデルと最適化を組み合わせる構成が一般的です。
分類・抽出|文書やデータを自動で仕分ける
分類・抽出は、大量の情報を「種類ごとに仕分ける」「必要な項目だけ抜き出す」処理をAIに任せる使い方です。1件あたりの削減時間 × 件数で効果を計算しやすいため、社内の合意を取りやすい領域でもあります。

例えば、
- メールやチャットの内容を判別して担当部署へ自動で振り分ける問い合わせの仕分け
- 請求書・注文書・契約書から金額・日付・取引先名を抜き出す帳票の項目抽出
- レビューやアンケートの自由記述をポジ/ネガや話題ごとに整理する感情分析・トピック抽出
- 外観検査や書類種別の判定、棚割りの確認といった画像による判別
などが挙げられます。この領域は、生成AIの登場で状況が大きく変わりました。
従来は「1カテゴリあたり数百件の正解データ」を用意して分類モデルを学習させる必要がありましたが、現在は分類基準を文章で指示するだけで、少量のサンプルから実用水準に届くケースが増えています。
学習データの準備コストが下がったことで、これまで「件数が少なくて割に合わない」と見送られてきた業務も対象に入るようになりました。なお、精度100%は前提にしないことが重要です。
文書活用・RAG|社内データを検索・要約・回答に使う
RAGは、生成AIが回答を作る際に、社内文書などの外部情報を検索して参照させる仕組みです。生成AIが学習していない自社固有の情報にも、根拠付きで答えられるようになります。

例えば、
- 就業規則や経費規程
- システムマニュアルへの問い合わせに自動回答する社内ヘルプデスク
- 過去の提案書・議事録から類似案件の実績や失注理由を引き出す営業支援
- 大量の仕様書・設計書の整合性チェックや矛盾点の抽出を支援する技術文書のレビュー
- FAQと過去対応履歴を横断検索して回答案を提示するカスタマーサポート
などで導入が進んでいます。仕組みとしては、チャンクに分割して検索できる形で格納する「データ整備」、質問に関連する箇所をベクトル検索やキーワード検索で取り出す「検索(Retrieval)」、取り出した箇所を根拠にLLMが回答文を組み立てる「生成(Generation)」の3つで構成されます。
そして、RAGの精度を最も大きく左右するのは最初のデータ整備です。同じ文書でも、雑にデータベース化した場合と、章・節・図表番号といった構造を保ったまま整理した場合とでは、回答精度に明確な差が出ます。
生成AIを用いてデータ分析を効率化したい方は以下の記事をチェックしてみてください。
参照記事:生成AIを用いてデータ分析を効率化!やり方や注意点・活用事例も紹介
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自社に合ったAIデータ活用方法の選び方
前章で5つの型を見てきましたが、実際に自社で何を選ぶべきかは、課題→データ→優先順位の順に絞り込むのが最も確実です。ここでは3つの選び方を解説します。
- 「使いたいAI」ではなく解決したい業務課題から逆算する
- 利用できるデータから実現可能性を確認する
- 期待効果と実装難易度から優先順位を決める
「使いたいAI」ではなく解決したい業務課題から逆算する
最初にやるべきは、「どの業務指標を、どれだけ改善したいのか」を言語化することです。改善したい指標が決まれば、選ぶべき手法は自動的に絞り込まれます。
例えば、以下のように改善したい指標があれば以下のようなAI活用が考えられます。
| 改善したい指標 | 相性のよいAI活用 |
|---|---|
| 売上・受注 | 予測(受注確度・解約予測)、レコメンド |
| 工数・残業時間 | 文書活用・RAG、分類・抽出 |
| ミス・手戻り | 分類・抽出、異常検知 |
| 欠品・廃棄ロス | 予測 + 最適化 |
| 設備の停止時間 | 異常検知・予兆検知 |
| 問い合わせ対応時間 | 文書活用・RAG、自動仕分け |
このとき、指標は現在値と目標値をセットで押さえてください。「問い合わせ対応を効率化したい」ではなく、「1件あたり平均12分かかっている一次回答を、8分に短縮したい」まで落とし込めれば、後の効果試算も判断もぶれなくなります。
利用できるデータから実現可能性を確認する
課題の候補が挙がったら、次はそれぞれについて「そのデータは本当に使えるのか」を確認します。ここで見るべきはデータ量だけではありません。以下の6項目を必ずチェックしてください。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 期間 | 季節性を学習できる年数があるか(目安2〜3年) |
| 粒度 | 予測したい単位で記録されているか |
| 欠損 | 抜けや異常値がどの程度あるか |
| 更新頻度 | 運用時に必要な頻度で入ってくるか |
| 正解ラベル | 「答え」が記録されているか |
| 利用権限・契約 | 社内規程や契約上、その用途に使えるか |
とくに見落とされがちなのが正解ラベルの有無です。たとえば「問い合わせを自動分類したい」という場合、過去の問い合わせに「どのカテゴリだったか」の記録が残っていなければ、精度を検証する土台がありません。
一方で、完璧な全社データ基盤が整うのを待つ必要はまったくありません。全社基盤の構築には年単位の時間と相応の投資が必要ですが、AI活用の検証に必要なのは、対象業務に関わる一部のデータだけです。
期待効果と実装難易度から優先順位を決める
複数の候補が残ったら、「効果の大きさ」と「実装難易度」の2軸で並べ、着手順を決めます。効果が大きくても実装に2年かかるテーマを最初に選ぶと、成果が出る前に社内の関心が離れてしまうためです。
- 効果の見積もりは工数削減型:「削減時間(分/件)× 月間件数 × 12か月 ÷ 60 × 人件費単価」
- 損失回避型:「年間の欠品・廃棄・故障停止による損失額 × 削減見込み率」
- 売上向上型:「対象顧客数 × 転換率の改善幅 × 平均単価」
といった形で、粗い試算で構わないので必ず金額に換算しておきます。難易度は、
- 前節で確認したデータがすでに使える状態か
- 3か月以内に効果検証まで到達できるか
- 既存の業務フローやシステムに組み込みやすいか
- セキュリティ・個人情報上のハードルはないか
といった観点で評価します。この2軸に並べると、たとえば社内規程のRAG検索や請求書の項目抽出は「効果:中/難易度:低」、店舗別の需要予測は「効果:大/難易度:中」というように、着手すべき順番が自然と見えてきます。
推奨するのは、「効果:中/難易度:低」のテーマから始める進め方です。
AIデータ活用に必要なデータ・基盤・ツール
テーマが決まったら、それを実現するための土台を確認します。必要なものは、
- データ|構造化データと非構造化データ
- データ活用基盤|データを集めて使える状態にする
- 分析ツール|生成AI・BI・AutoML・Pythonを目的で使い分ける
です。なお、この3つを一度に完璧に揃える必要はありません。
データ|構造化データと非構造化データ
AI活用で扱うデータは、大きく構造化データと非構造化データに分かれます。生成AI以前は前者が中心でしたが、現在は後者こそが差別化のもとになりつつあります。
| 区分 | 特徴 | 具体例 |
|---|---|---|
| 構造化データ | 行と列で表現でき、そのまま計算できる | 売上、顧客属性、在庫、センサー値、Web行動ログ |
| 非構造化データ | 決まった形式がなく、そのままでは集計できない | 議事録、契約書、PDF、問い合わせ履歴、画像、音声、動画 |
一般に、企業が保有するデータの大半は非構造化データだと言われます。これらは長らく「人が読むしかない情報」でしたが、生成AIによって要約・分類・タグ付け・検索といった形で分析対象に組み込めるようになりました。
とくに強いのは、両者を組み合わせたときです。たとえば「ログイン頻度や投稿数といった行動データ(構造化)」と「投稿本文やコメント(非構造化)」を掛け合わせると、定量的な活動量だけでは分からない、関心の傾向や場の雰囲気まで見えてきます。
データ活用基盤|データを集めて使える状態にする
データ活用基盤とは、社内に散らばったデータを集約し、加工し、必要な人やシステムが安全に取り出せる状態にする仕組みの総称です。求められる機能は次の4つに整理できます。
| 機能 | 役割 |
|---|---|
| ①収集 | 各システムからデータを取り込む |
| ②蓄積 | 一元的に保管する |
| ③加工 | 分析・学習に使える形に整える |
| ④提供 | 必要な人・システムに安全に渡す |
ここで大切なのは、重要なのは製品名ではないということです。「◯◯というDWHを入れたから大丈夫」ではなく、「対象業務に必要なデータへ、安全に、継続的にアクセスできる状態になっているか」が本質です。逆に言えば、この状態さえ担保できるなら、初期段階はクラウドストレージとスプレッドシートの組み合わせでも構いません。
分析ツール|生成AI・BI・AutoML・Pythonを目的で使い分ける
分析ツールは「どれが優れているか」ではなく、目的に応じて使い分けるのが正解です。以下の4つを押さえておけば、企業の実務はほぼカバーできます。
| ツール | 得意なこと | 苦手なこと |
|---|---|---|
| 生成AI(ChatGPT等) | 文書の要約・分類、コード生成、一次分析、RAG | 厳密な数値計算、再現性の担保 |
| BIツール(Tableau、Looker等) | 定型のモニタリング、共有、ドリルダウン | 予測、複雑なモデリング |
| AutoML | 予測モデルの高速な試作、精度の当たりづけ | 細かなチューニング、特殊な問題設定 |
| Python/R | 前処理から実装・運用まで自由に構築 | 属人化しやすい、着手コストが高い |
現実的な進め方としておすすめなのは、「生成AIやAutoMLで素早く当たりをつけ、有望だと分かったものをPythonで本番実装する」という二段構えです。最初から本番品質のコードを書き始めると、途中で「そもそもこのテーマは効果が薄い」と分かったときの損失が大きくなります。
一方、BIツールは「AI活用の対抗馬」ではなく、AI活用の成果を可視化する受け皿として考えてください。
以下の記事では、データ活用の進め方を5つのステップで解説していますので、あわせてご確認ください。
参照記事:データ活用の進め方。AI導入前に必須の「社内データ棚卸し」5ステップ
AIによるデータ分析・活用事例
ここからは、実際にAIとデータを組み合わせて成果を出している2つの事例を紹介します。いずれも弊社リベルクラフトが支援したプロジェクトです。
- オシロ株式会社
- JAXA
オシロ株式会社

| 課題 | 行動データはあるが指標の意味づけができない |
| 取り組み | 予測モデル+LLMによるテキスト分析 |
| 成果 | 定着のターニングポイント特定、UI改善の示唆 |
オシロ株式会社は、クリエイターやブランドとファンをつなぐコミュニティプラットフォーム『OSIRO』を提供しています。同社にはブログ投稿、コメント、イベント参加といったユーザー行動データが十分に蓄積されていましたが、課題はそのデータをどう解釈すればコミュニティ活性化に役立つのかが分からないことでした。
そこで取り組んだのが、まず「良い状態」を定量的に定義することでした。コミュニティを積極的に盛り上げているユーザーの状態を「弾んでいる」と定義し、それを定量指標に落とし込んだうえで、他の行動指標との関連を分析しています。
その結果、「自分からコミュニティの誰かに話しかけられるようになること」がユーザー定着のターニングポイントになっている可能性を発見。また、ユーザー同士が認知してからメッセージのやり取りに至るまでのステップを分解し、どこで離脱が起きるかを特定したことで、UI改善の具体的な方向性も得られています。
以下のリンクから事例の詳細を確認できます。
⇨オシロ株式会社の事例詳細はこちら
JAXA

| 課題 | 大量の技術文書を人手で確認しきれない |
| 取り組み | 閉域環境でのRAG |
| 成果 | 数週間の確認作業に数分で当たりをつける目処 |
JAXA(宇宙航空研究開発機構)では、衛星や探査機の開発において、設計・試作・実装といった節目ごとに「審査会」を設け、有識者が技術文書をチェックしています。
小型月着陸実証機「SLIM」をはじめとする開発では、構造・電源・姿勢制御など多岐にわたる技術要素ごとに詳細なレポートが作成され、その総量は1,000ページを超えます。審査会が週に複数回開かれることもあり、10〜20名の専門家にかかる負荷は相当なものでした。
このPoCで採用したのが、閉域環境のRAGです。情報の機密性を担保するため、LLM・ベクトルDB・チャットボットをすべて同じ閉域クラウド内に構築し、機密区分に収まるデータのみを対象に検証を進めました。
回答精度を高める工夫として重視したのは、論文形式の章・節・図表番号といった構造を保ったままデータを整理し、目次やセクション情報を活かしてチャンキングすることです。
その結果、1,000ページ級の文書を投入しても、根拠を示しながら矛盾点や弱点を抽出できることが確認されました。人間が数週間かけて行う確認作業について、AIが数分で当たりをつけられる見通しが立った点は大きな前進です。
こちらの事例については以下のリンクから詳細を確認できます。
⇨Jaxaの事例詳細はこちら
AIデータ活用で失敗しないための4つのポイント
ここまで進め方を見てきましたが、実際のプロジェクトが止まる理由は、技術的な難しさよりも進め方の設計ミスにあることがほとんどです。最後に4つのポイントを紹介します。
- データが完璧に揃うのを待たず、必要な範囲から始める
- PoCの前にKPIと継続・撤退基準を決める
- 現場の業務フローに組み込める形で設計する
- セキュリティ・個人情報・AIガイドラインを確認する
データが完璧に揃うのを待たず、必要な範囲から始める
最も多い停滞理由が、「データが整っていないから」という理由でAI検証そのものを先送りしてしまうケースです。しかし、データが完璧に整った状態というものは、事実上どの企業にも存在しません。
そもそも、どのデータをどの粒度で整えるべきかは、何に使うかが決まらなければ判断できません。用途が決まっていない状態で全社データ基盤の整備を始めると、「とりあえず全部集める」ことになり、コストばかりが膨らみます。
現実的な進め方は次の通りです。
- 対象業務を1つに絞り、そのテーマに必要なデータだけを特定する
- 完璧なクレンジングは目指さず、まず現状のデータで一度分析してみる
- 分析してみて初めて分かる「このデータの欠損が致命的」「この項目は不要だった」という発見を、次の整備計画に反映する
- 成果が出たテーマのデータ整備を、そのまま次のテーマの土台として再利用する
「用途 → 必要なデータ → 整備」という順序を守ることで、整備した分がすべて実際に使われる状態を保てます。データ整備は目的ではなく、AI活用の手段です。
PoCの前にKPIと継続・撤退基準を決める
PoC(実証実験)が「やってみて、それなりの結果が出た」で終わってしまう原因は、成功と失敗の定義を事前に決めていないことです。基準がなければ、出てきた結果を前に「次に進むべきか」を誰も判断できません。
PoCを始める前に、最低限これだけは合意しておきましょう。
| 決めておく項目 | 具体例 |
|---|---|
| 評価指標 | 予測誤差◯%以内、対応時間◯分削減、検知率◯%以上 |
| 目標値の根拠 | 現行の人手運用の水準(=これを上回れば意味がある、というライン) |
| 検証期間 | 3か月(延長は原則1回まで、など) |
| 判定のタイミング | 開始から6週目に中間レビュー、12週目に最終判定 |
| 継続の条件 | 目標値を達成し、かつ現場が運用に組み込める見通しがあること |
| 撤退の条件 | 目標値の◯割に届かない、またはデータ取得が継続できない場合 |
| 判断する人 | 事業責任者 |
とくに重要なのが撤退基準です。撤退基準がないプロジェクトは、成果が出ないまま惰性で続くか、逆に成果が出ているのに社内の関心が薄れて自然消滅するかのどちらかになりがちです。
現場の業務フローに組み込める形で設計する
精度の高いモデルができても、現場が使わなければ効果はゼロです。そして現場が使わない理由は、たいてい「精度が低いから」ではなく、「使う手間が業務の流れに合っていないから」です。
設計段階で、次の5点を必ず具体化してください。
- 誰が使うのか
- いつ使うのか
- どこで見るのか
- 出力をどう扱うのか
- AIが間違えたときどうするか
とくに「どこで見るのか」は軽視されがちですが、新しいツールを1つ増やすだけで利用率は下がります。すでに毎日開いているシステムや、日常的に使っているチャットに出力を届けられないかを検討してください。
セキュリティ・個人情報・AIガイドラインを確認する
最後に、後回しにすると本番直前で全体を止めかねないのが、セキュリティ・法令・ガイドラインの確認です。着手前の30分の確認で、数か月の手戻りを防げます。
確認すべき主な観点は次の通りです。
| 観点 | 確認すること |
|---|---|
| データの持ち出し範囲 | 外部のAIサービスに送ってよいデータか。機密区分ごとの扱いは定まっているか |
| 個人情報 | 個人情報保護法上の利用目的の範囲内か。第三者提供・委託の整理は済んでいるか |
| 契約・利用規約 | 取引先から預かったデータをAI学習に使ってよい契約になっているか |
| 学習利用の可否 | 利用するAIサービスが、入力データを学習に使わない設定になっているか |
| アクセス権限 | AI経由で、本来見られない情報が参照できてしまわないか |
| 出力の責任 | AIの出力を誰が確認し、誰が最終責任を負うのか |
国内では、総務省・経済産業省が「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」を示しており、AIの開発者・提供者・利用者それぞれが取り組むべき事項が整理されています。
法的拘束力のあるルールではありませんが、自社のAIガバナンスを設計する際の共通言語として参照する価値があります。
AI・データ活用の導入・運用ならリベルクラフト
ここまで解説してきた通り、AIによるデータ活用の成否を分けるのは、モデルの性能ではありません。
- 解決すべき業務課題を正しく設定できるか
- 手元のデータで実現可能なテーマに落とし込めるか
- 現場の業務フローに組み込めるか
の3点です。
しかし実際には、「抽象的な問題意識はあるが、それをどう分析課題に落とし込めばよいか分からない」という段階でつまずく企業が大半です。データ分析の知識が限られていると、「何を分析すれば知りたいことが分かるのか」という道筋を立てること自体が難しいためです。
そんな時はリベルクラフトへご相談ください。

リベルクラフトでは、
- 業務課題の数理化から本番運用まで一気通貫
- 予測・最適化・推薦・画像解析の幅広い領域
- MLOps基盤と継続再学習までの運用設計
といった強みを活かしながら、貴社のデータをビジネス成果に変えます。もちろん、AIを活用したデータ活用をはじめ、生成AIだけでは解けない業務課題に、データと数理モデルで成果を出しますので、ぜひご相談ください。
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