AIエンジニアの求人動向。採用市場と企業の探し方
「AIエンジニアの求人は増えていると聞くけれど、実際どれくらいの規模なのか実感が持てない」という方も多いでしょう。
求人サイトを見れば案件が並んでいるものの、それが本当に伸びているのか、どんな企業が採用に力を入れているのか、未経験でも入り込める余地があるのかは、断片的な情報だけでは判断しにくいものです。
そこで本記事では、 ・AIエンジニアの求人数・求人倍率の推移データ ・求人が増えている3つの背景 ・どんな企業・業界がAIエンジニアを募集しているか ・求人票に出てくる職種・スキル要件の読み方 ・雇用形態別の特徴と求人票を確認するときのポイント についてわかりやすく解説します。これからAIエンジニアを目指す方、転職・キャリアチェンジのタイミングを見極めたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
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AIエンジニアの求人は増えている?結論と全体像
まず結論から確認しましょう。AIエンジニアの求人は、統計データで見る限り明確に増えています。
日経クロステックが報じたリクルートエージェントの調査によると、エンジニア系職種のAI関連求人数は、2017年度を「1」とした場合、2023年度には「4.73」まで伸びています。6年で約4.7倍という伸び率は、IT業界の他分野と比べても際立った数字です。

6年で約4.7倍。エンジニア職のAI関連求人が急増している理由
この調査では、AI関連求人のうち約7割がエンジニア系職種、残り約3割が営業・企画・管理部門などの非エンジニア職種という内訳も示されています。興味深いのは、非エンジニア職種のAI関連求人が2017年度比で約5.24倍と、エンジニア職の伸び率を上回っている点です。AIが「一部の技術者が扱う特殊な領域」から「事業部門でも活用を前提にする技術」へと位置づけが変わりつつあることが、この数字からも読み取れます。
有効求人倍率から見る「売り手市場」の実態
求人数だけでなく、採用のしやすさを示す有効求人倍率でも「売り手市場」の傾向が確認できます。IT技術関連職の有効求人倍率は3.3〜3.5倍前後で推移しており、全職種平均の約1.5倍を大きく上回ります。求人媒体運営会社リラシクの集計では、AIエンジニアに限った求人倍率はIT全体の約8倍という水準です。
有効求人倍率が高いということは、1人の求職者に対して複数の求人が競合している状態を意味します。企業側が採用に苦戦している状態が続いているとも言えるため、AIエンジニアを目指す側にとっては、応募先の選択肢が豊富にある状況が続いていると捉えられます。
AIエンジニアの求人が増えている3つの背景
求人が伸びている実態が分かったところで、なぜここまで急速に増えているのか、背景を3つに整理します。

生成AI・LLMの普及で業務適用の裾野が広がった
2022年11月にOpenAIが「ChatGPT」を公開して以降、生成AI・大規模言語モデル(LLM)を業務に組み込む動きが、業界を問わず広がりました。以前のAIエンジニアは、機械学習モデルをゼロから設計・学習させる業務が中心でしたが、現在はLLMを土台に、自社データを参照させるRAG(検索拡張生成)や、複数のタスクを自律的にこなすAIエージェントを実装できる人材の需要が急速に伸びています。この技術トレンドの変化が、求人数そのものを押し上げる要因になっています。
政府によるAI・半導体産業への公的支援
技術面だけでなく、政策面からの後押しもあります。政府は2024年11月、2030年までの7年間でAI・半導体産業に10兆円以上の公的支援を行う方針を発表しました。国が主導する投資は、企業のAI関連投資・採用計画を後押しする材料になり、中長期的な求人増加の土台を支えています。
DX推進人材の不足が慢性化している
企業側の事情として、DX推進を担う人材が慢性的に不足している実態もあります。リラシクの調査では、DX推進人材が不足していると回答した企業の割合は85.1%にのぼります。AI活用をDX戦略の中核に据える企業が増える一方で、それを実装できる人材の育成が追いついていないため、企業は中途採用に頼らざるを得ない状況が続いています。
この3つの背景はいずれも一時的なブームではなく、技術トレンド・政策・企業の構造的な人材不足という異なる層で同時に進んでいる変化です。次の章では、実際にどんな企業がAIエンジニアを募集しているのかを具体的に見ていきましょう。
どんな企業がAIエンジニアを募集しているか
求人が増えている背景を踏まえて、実際にどんな企業・業界がAIエンジニアの採用に動いているかを確認しましょう。
業界別の採用傾向(IT・Web、製造業、金融、官公庁)
AIエンジニアの募集は、もはやIT・Web業界に限った動きではありません。自動車メーカーをはじめとする製造業、金融機関、官公庁まで、幅広い業界でAI導入プロジェクトが進行しており、それぞれの業界がAIスキルを持つ人材の採用に動いています。
- IT・Web業界:生成AI・LLMを活用した自社サービスの機能拡張、AIエージェントを組み込んだプロダクト開発
- 製造業:品質検査の自動化、需要予測、生産最適化など、現場データを活用したAI実装
- 金融機関:与信審査・不正検知の高度化、社内ナレッジを活用した業務効率化
- 官公庁・自治体:行政サービスの効率化、住民対応の自動化を目的としたAI活用の検討・実装
業界の裾野が広がったことで、AIエンジニアが働ける環境の選択肢そのものが増えている状態です。
主要企業の求人数に見る傾向
求人媒体「CareeHUB for AI Engineer」が主要企業の公式採用ページを独自に集計したレポートによると、AI・機械学習関連の公開求人数には企業ごとに大きな差があります。同レポートでは、サイバーエージェントが公開求人401件中36件、Amazon Japanが25件、DeNAが12件、メルカリが8件をAI・ML関連の求人として掲載していたと報告されています。
| 企業 | AI/ML関連の公開求人数(例) | 傾向 |
|---|---|---|
| サイバーエージェント | 36件 | 全公開求人401件中の割合が高く、AI領域への積極投資がうかがえる |
| Amazon Japan | 25件 | グローバル企業として継続的にAI人材を募集 |
| DeNA | 12件 | 新卒採用でも600万円〜1,000万円の年収レンジを明記 |
| メルカリ | 8件 | プロダクト開発と連動したAI関連職の募集 |
この表から読み取れるのは、大手IT企業を中心に「生成AI・LLM専門の求人」を独立したカテゴリとして設置する動きが広がっている点です。従来は「エンジニア」の1カテゴリに含まれていたAI関連職が、採用の重心が生成AI領域に移るにつれて、専門枠として切り出されるようになっています。
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求人票でよく見るAIエンジニアの職種・スキル要件
採用企業の傾向が分かったところで、実際の求人票にどんな職種名・スキル要件が書かれているのかを見ていきましょう。
生成AI・LLM開発、MLOps、AIエージェント設計。職種呼称の違い
AIエンジニアの求人票では、細分化された職種名が使われることが増えています。代表的な3つの呼称を整理すると、次のとおりです。
- 生成AI・LLM開発エンジニア:大規模言語モデルを活用したアプリケーション・RAGシステムの設計・実装を担当します。プロンプト設計やベクトルデータベースの知識が求められることが多い職種です
- MLOpsエンジニア:機械学習モデルの学習・デプロイ・運用を継続的に回す基盤づくりを担当します。インフラ・DevOpsの知識と機械学習の知識、両方が求められます
- AIエージェント設計エンジニア:AIが自律的に複数のタスクをこなす仕組み(エージェント)の設計・実装を担当します。比較的新しい領域のため、求人数はまだ少ないものの単価が高い傾向にあります
このほか「機械学習エンジニア」という呼称も引き続き広く使われており、生成AI以前から存在する画像認識・需要予測などのモデル開発を担う求人で見かけます。求人票のタイトルだけで判断せず、業務内容の記載まで確認することが大切です。
AIエンジニアと混同されやすい職種にデータサイエンティストがあります。未経験からどちらを目指すか迷う場合は、以下の記事も参考にしてみてください。
参照記事:未経験からデータサイエンティストになるには?3つのルートと学習ロードマップ
未経験可の求人と経験者向け求人の見分け方
求人票を見るときは、必須スキルの記載内容から未経験者向けかどうかを判断できます。「Pythonでの実装経験」「機械学習の基礎知識」のように学習可能な範囲が必須要件になっている求人は、未経験からのチャレンジを想定していることが多い一方、「本番運用中のMLOps基盤の設計経験」「特定フレームワークでの数年規模の開発実績」のように具体的な実務経験が必須になっている求人は、経験者向けです。未経験者向け求人は大手企業よりもスタートアップ・受託開発企業に多く見られる傾向があります。
雇用形態別に見るAIエンジニア求人の特徴
求人票の中身が分かったところで、契約形態による違いを整理しましょう。
正社員・SES・業務委託・フリーランスの違い
AIエンジニアの求人は、雇用形態によって働き方・報酬の決まり方が大きく異なります。
| 雇用形態 | 特徴 | 報酬の目安 |
|---|---|---|
| 正社員 | 企業に直接雇用され、固定給・賞与が基本。長期的なスキル育成やキャリアパスが用意されやすい | 年収558万円〜629万円程度(正社員平均) |
| SES(システムエンジニアリングサービス) | SES企業に所属し、客先企業の案件に常駐して働く。契約は企業間で結ばれる | 案件の単価によって変動 |
| 業務委託 | 企業と個人(またはフリーランス)が案件単位で契約。成果物・稼働時間に応じて報酬が決まる | 月額平均約90万円 |
| フリーランス | 個人事業主として複数案件を受託。スキル・実績に応じて単価差が大きい | 月額80万円〜150万円、希少スキルは200万円超も |
近い職種であるデータサイエンティストの年収相場・上げ方については、以下の記事で詳しく解説しています。
参照記事:データサイエンティストの年収はいくら?年収を上げる3つの方法も解説
この表から読み取れるのは、報酬の絶対額だけを見ると業務委託・フリーランスの方が高く見えるものの、社会保険や案件の継続性、教育投資といった要素を含めると、正社員雇用の方が総合的なコストは安定しやすいという点です。実務未経験の段階からフリーランスとして案件を獲得するのは難しいため、まずは正社員またはSESとして実務経験を積み、その後の選択肢としてフリーランスを検討するのが現実的な順序になります。
リモートワーク可否の傾向
働き方の柔軟性も、求人を比較するうえで重要な軸です。求人媒体リラシクの集計では、AIエンジニア求人のうち約40%がフルリモート勤務を許容しています。これはコーディング中心の業務が多く、常時オフィスに出社する必要性が薄いという職種特性が背景にあります。地方在住のままAIエンジニアとして働きたい方にとっても、選択肢が広がっている状況です。
AIエンジニアの求人票を確認するときの3つのポイント
雇用形態の違いが分かったところで、実際に求人票を見るときに確認すべきポイントを3つに絞って解説します。

- 業務内容が「開発」か「運用」かを見分ける:同じ「AIエンジニア」という職種名でも、新しいモデル・アプリケーションを作る「開発」中心の業務なのか、既存システムの保守・監視を担う「運用」中心の業務なのかで、求められるスキルもキャリアの伸びしろも変わります。求人票の業務内容欄で「設計」「実装」「開発」という言葉が中心か、「運用」「保守」「監視」が中心かを確認しましょう
- 必須スキルと歓迎スキルの線引きを確認する:必須スキル欄に実務経験を前提とする項目が並んでいる場合、未経験からの応募は難しくなります。逆に、必須が「基礎知識」「学習意欲」にとどまり、実務経験が歓迎スキル欄に回っている求人は、未経験者にも門戸が開かれている可能性が高いと判断できます
- 生成AI・LLM関連の記載があるかを確認する:求人票に「LLM」「RAG」「生成AI」「エージェント」といった言葉が含まれているかどうかは、その企業が最新の技術トレンドに投資しているかを見極める材料になります。従来型の機械学習モデル開発のみの求人と、生成AI領域まで踏み込んだ求人とでは、今後数年で求められるスキルの伸びしろが変わってきます
つまり、求人票は職種名だけで判断せず、業務内容・必須スキル・技術トレンドの3点を確認することで、自分に合った求人かどうかを見極めやすくなります。
まとめ
- AIエンジニアのエンジニア系求人は2017年度から2023年度で約4.7倍に増加し、有効求人倍率もIT全体の約8倍と「売り手市場」が続いている
- 求人増加の背景には、生成AI・LLMの普及、政府によるAI・半導体産業への公的支援、DX推進人材の慢性的な不足という3つの要因がある
- IT・Web業界だけでなく、製造業・金融機関・官公庁まで幅広い業界がAIエンジニアの採用に動いている
- 求人票には「生成AI・LLM開発」「MLOps」「AIエージェント設計」など細分化された職種名が使われ始めている
- 正社員・SES・業務委託・フリーランスで報酬の決まり方が異なり、フルリモート求人も全体の約40%を占める
- 求人票を確認するときは「業務内容」「必須スキルと歓迎スキルの線引き」「生成AI・LLM関連の記載」の3点を見ることで、自分に合った求人かどうかを見極めやすくなる
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「求人市場が伸びているのは分かったが、未経験の自分が実際にこの市場に入っていけるのか、何から手をつければいいか分からない」と感じた方も多いのではないでしょうか。地道な学習を継続できる方、数字やロジックで考えるのが苦にならない方は、AIエンジニアに向いている素養を持っていると言えます。
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- 独学で何から手をつければいいか分からず止まってしまっている方
- 生成AI・LLM・RAGまで含めた最新のスキルを実務レベルで身につけたい方

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この記事を書いた人
慶應義塾大学で金融工学を専攻。 卒業後はスタートアップのデータサイエンティストとして、AI・データ活用コンサルティング事業などに従事。 その後、株式会社セブン&アイ・ホールディングスにて、小売・物流事業におけるAI・データ活用の推進に貢献。 株式会社リベルクラフトを設立し、AIやデータサイエンスなどデータ活用領域に関する受託開発・コンサルティングや法人向けトレーニング、教育事業を展開。

