AIエンジニアの仕事内容とは。1日の流れと4つの業務フェーズ

「AIエンジニアという仕事に興味はあるけれど、実際に1日をどう過ごしているのかイメージが湧かない」という方も多いでしょう。

求人サイトや職業紹介のページを見ると、「AI・機械学習モデルの実装」「データ収集・分析」といった言葉は並んでいますが、朝から夕方までの具体的な業務の流れや、プロジェクトの中でどんな作業に時間を使っているのかまでは分かりにくいものです。

そこで本記事では、

  • AIエンジニアの1日の流れをスケジュール例で具体的に紹介
  • 仕事内容を4つのフェーズに分けて、それぞれの具体的な作業内容を解説
  • 生成AI時代に増えたRAG・AIエージェント構築という新しい仕事の中身
  • チーム内の役割分担と、PoCから本番運用までのプロジェクトの流れ

についてわかりやすく解説します。AIエンジニアという職種の実務を具体的に知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

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AIエンジニアの仕事内容とは。担う範囲を一言で整理

AIエンジニアの仕事内容を具体的に見ていく前に、まずはどこまでの範囲を担う仕事なのかを整理しておきましょう。

「AIを作る」ではなく「AIを動かし続ける」までを担う仕事

AIエンジニアの仕事内容を一言で表すと、AI・機械学習モデルを実際に動くシステムに組み込み、業務やサービスの中で継続的に使える状態にすることです。 モデルを作って終わりではなく、データの準備から実装、リリース後の運用改善まで、一連の工程に関わるのが特徴です。

厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」でも、AIエンジニアは人工知能に関わるシステムの設計・開発・運用を担う職業として紹介されています(出典:厚生労働省job tag「AIエンジニア」職業詳細)。単発のモデル構築だけでなく、システムとして安定稼働させるところまでが仕事の範囲に含まれている点は、実務を理解するうえで押さえておきたいポイントです。

データサイエンティストとの役割分担(概要)

AIエンジニアとよく混同される職種にデータサイエンティストがあります。データサイエンティストが「どのデータをどう分析すれば、どんな課題解決につながるか」を設計する役割を担うのに対し、AIエンジニアは「そのモデルを実際に動くシステムとして実装・運用する」役割を担う点が違いです。

データサイエンティストの仕事内容そのものについては、以下の記事で詳しく解説しています。

参照記事:データサイエンティストの仕事内容。生成AIで変わったことと、11年変わらないこと

参照記事:データサイエンスとは。身近な例・仕事内容・学び方まで初心者向けに解説

役割分担の詳細を踏まえたうえで、次はAIエンジニアが実際に1日をどう過ごしているのか、具体的なスケジュール例で見ていきましょう。

AIエンジニアの1日の流れ。仕事内容をスケジュールで見る

仕事内容の全体像を押さえたところで、次はAIエンジニアが実際に1日をどう過ごしているのかを、時間の流れに沿って見ていきましょう。

案件のフェーズによって業務の比重は変わりますが、リベルクラフトの開発現場での実態をもとにすると、AIエンジニアの1日はおおむね以下のような流れになります。

AIエンジニアの1日のスケジュール例。午前は進捗確認とデータ前処理、午後はモデル開発・実装作業、夕方はレビューと翌日の計画
時間帯 主な業務内容
9:00〜9:30 メール・チャットの確認、当日の作業優先順位の確認
9:30〜10:00 チーム内の進捗共有ミーティング
10:00〜12:00 データ前処理、または前日実行したモデル学習の結果確認
12:00〜13:00 昼休憩
13:00〜15:30 モデルの開発・学習・パラメータ調整(実装作業のメイン時間帯)
15:30〜16:00 顧客・チーム向けの進捗報告
16:00〜17:30 システムへの実装作業、またはAPI連携・動作確認
17:30〜18:00 当日の作業ログ整理、翌日のタスク整理

午前:進捗確認とデータ前処理

午前中は、メールやチャットツールでの連絡確認から始まり、チーム全体の進捗共有ミーティングを行うことが多い時間帯です。そのあとは、前日に実行したモデル学習の結果を確認したり、学習データの欠損値補完・表記ゆれの統一といった前処理作業を進めたりします。データの質がモデルの精度を大きく左右するため、この工程には多くの時間が割かれます。

午後:モデル開発・実装作業

午後は、実際にモデルを構築・学習させる作業や、学習済みモデルをシステムに組み込む実装作業が中心になります。アルゴリズムの選定、ハイパーパラメータの調整、精度検証といった試行錯誤を繰り返しながら、目標とする精度に近づけていく地道な作業が続きます。案件によっては、この時間帯にAPIの設計や既存システムとの連携作業を行うこともあります。

夕方:レビューと翌日の計画立案

夕方は、その日の作業をチーム内で振り返り、進捗をドキュメントに残す時間にあてることが一般的です。実装したコードのレビューを受けたり、翌日以降のタスクの優先順位を整理したりして1日を終えます。案件の終盤では、この時間帯に本番環境へのデプロイ準備や、モデルの精度モニタリング結果の確認が加わることもあります。

つまり、AIエンジニアの1日は「データを整える」「モデルを作る」「システムに組み込む」という3つの作業を、案件のフェーズに応じて行き来しながら進む1日だといえます。次は、この3つの作業を含めた仕事内容全体を、案件単位のフェーズという軸で整理し直してみましょう。

AIエンジニアの仕事内容を4つのフェーズで具体的に見る

1日の流れの中で登場した作業を、案件全体の時系列で見ると、AIエンジニアの仕事内容は大きく4つのフェーズに整理できます。それぞれのフェーズで具体的に何をするのかを見ていきましょう。

AIエンジニアの仕事内容を4つのフェーズで整理した図。1.データ収集・前処理、2.モデル開発・学習、3.システムへの実装、4.運用・改善(MLOps)

1. データ収集・前処理

AIモデルの精度は、学習に使うデータの質に大きく左右されます。このフェーズでは、業務システムのログ、センサーデータ、テキストデータ、画像データなど、目的に応じたデータをまず収集します。

収集したデータはそのまま使えないことがほとんどで、以下のような前処理を行います。

  • 欠損値の補完、外れ値の除去
  • 表記ゆれ・単位の統一
  • カテゴリ変数の数値化(エンコーディング)
  • 学習に有効な特徴量の設計(特徴量エンジニアリング)

実際のプロジェクトでは、この前処理の工程だけで全体の作業時間の3〜4割を占めることも珍しくありません。地味に見える作業ですが、モデルの精度を左右する重要な工程です。

2. AIモデルの開発・学習

前処理したデータを使い、目的に応じたアルゴリズムを選定してモデルを構築・学習させる工程です。画像認識であれば畳み込みニューラルネットワーク、自然言語処理であればTransformer系のモデルなど、扱うデータの種類によって使う技術が変わります。

このフェーズでは、Python・機械学習ライブラリ(scikit-learn・PyTorch・TensorFlow等)を使い、複数のアルゴリズムやパラメータの組み合わせを試しながら、精度・処理速度・運用コストのバランスが取れたモデルを選定します。1回の学習で完成することはまれで、評価と調整を何度も繰り返しながら精度を高めていきます。

3. システムへの実装

学習したモデルを、実際の業務システムやアプリケーションに組み込む工程です。モデル単体では価値を生まないため、以下のような実装作業が必要になります。

  • モデルをAPIとして呼び出せる形にする(FastAPI等のフレームワークを利用)
  • 既存のWebサービス・業務システムとデータ連携させる
  • クラウド基盤(AWS・GCP・Azure等)上に処理基盤を構築する

参照記事:ai開発 環境でも、開発・実装に必要な環境の考え方を解説しています。モデル単体では完結しない「動くシステムにする」実装力が問われる工程です。

4. 運用・改善(MLOps)

システムに実装したあとも、モデルの精度は時間の経過とともに劣化することがあります(データドリフトと呼ばれる現象です)。このフェーズでは、予測精度をモニタリングし、必要に応じて再学習やチューニングを行います。この一連の運用プロセスは「MLOps」と呼ばれ、インフラの安定運用・障害対応もAIエンジニアの重要な仕事です。

つまり、AIエンジニアの仕事内容は「モデルを作って終わり」ではなく、データを整える段階から、作ったモデルを動かし続ける段階まで、一連の工程すべてに責任を持つ仕事だといえます。この骨格を踏まえたうえで、次は生成AIの普及によって新しく増えた業務内容を見ていきましょう。

生成AI時代に増えたAIエンジニアの仕事。RAG・AIエージェント構築の実務

4つのフェーズという仕事内容の骨格に、生成AI・LLM(大規模言語モデル)の実務活用が広がったことで、新しい業務が加わってきています。リベルクラフトの開発現場でも、モデルをゼロから学習させる案件よりも、既存のLLMをどう業務に組み込むかという実装案件が増えているのが実態です。

LLMに社内データを参照させる「RAG」構築という仕事

RAG(検索拡張生成)とは、LLMが回答を生成する際に、社内文書やデータベースなど外部の情報を検索・参照させる仕組みです。AIエンジニアの仕事内容として、社内データをベクトル化して検索可能な状態に整備し、LLMと検索エンジンを連携させる実装が増えています。

参照記事:rag 社内データ活用でも、RAGを使った社内データ活用の具体的な方法を解説しています。

複数タスクを自律的にこなす「AIエージェント」開発という仕事

AIエージェントとは、与えられた目的に対して、複数のタスクを自律的に判断・実行するAIの仕組みです。情報検索・文書作成・外部システムへの操作依頼といった一連の作業を、LLMが状況を判断しながら組み合わせて実行できるように設計・実装する仕事も、AIエンジニアの業務範囲に含まれるようになってきています。

参照記事:AIエージェントとはでも、AIエージェントの仕組みを詳しく解説しています。

「モデルを作る」から「既存のAIを組み込む」へ比重がシフトしている実態

生成AIが登場する以前は、AIエンジニアの仕事内容の中心はモデルをゼロから学習させることでした。しかし現在は、既存の高性能なLLMをどう自社の業務やデータに適応させるかという、実装・統合寄りの業務の比重が高まっています。プログラミングスキルや機械学習の基礎知識に加えて、LLMアプリケーションの開発フレームワーク(LangChain・LangGraph等)の扱い方が、実務での評価を分ける場面が増えてきているのが実態です。

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AIエンジニアの仕事は一人で完結しない。チーム内の役割分担

生成AI時代に増えた業務内容が分かったところで、次はAIエンジニアが実際にどんなメンバーとチームを組んで仕事を進めているのかを見ていきましょう。

データサイエンティスト・PdM・インフラエンジニアとの連携

AIエンジニアの仕事は、多くの場合ほかの職種と役割分担しながら進みます。

職種 プロジェクトでの主な役割
データサイエンティスト 解くべき課題の設計、モデルの精度検証、分析結果の解釈
PdM(プロダクトマネージャー) 要件定義、優先順位づけ、ビジネス側との調整
AIエンジニア モデルの実装、システムへの組み込み、運用基盤の構築
インフラエンジニア クラウド環境の構築、セキュリティ・スケーラビリティの確保

この表から分かるとおり、AIエンジニアは「モデルを実際に動くシステムにする」役割を軸に、課題設計を担うデータサイエンティストや、ビジネス要件を整理するPdMと連携しながらプロジェクトを進めます。

小規模プロジェクトでは兼任することも多い

大規模なプロジェクトでは上記のような役割分担が明確に分かれますが、小規模なプロジェクトやスタートアップの開発現場では、1人のAIエンジニアがデータサイエンティストの業務やインフラ構築まで兼任することも珍しくありません。案件の規模や体制によって、担う仕事の範囲が変わる点も、AIエンジニアという仕事の特徴の1つです。

PoCから本番運用まで。プロジェクト単位で見るAIエンジニアの仕事の流れ

日々の業務内容やチーム内の役割分担が分かったところで、次は1つの案件が始まってから本番運用に至るまで、時間軸に沿ってAIエンジニアの仕事の流れを見ていきましょう。

AI開発プロジェクトの流れ。PoC(概念実証)から本番実装、運用・改善までの3ステップ
プロジェクトフェーズ AIエンジニアの主な仕事内容
PoC(概念実証) 検証用データの整備、簡易モデルの実装、精度検証環境の構築支援
本番実装 モデルのAPI化、既存システムとの連携、負荷に耐えるインフラ構築
リリース後の運用 精度モニタリング、再学習パイプラインの構築、障害対応(MLOps)

PoC(概念実証)フェーズでの動き方

PoCの段階では、「そのAIが本当に業務課題を解決できるか」を小規模なデータ・簡易的な実装で検証します。AIエンジニアはこの段階から関わり、データサイエンティストが選定したアルゴリズムを動かせる環境を整えたり、簡易的なモデルを実装して精度を検証したりする役割を担います。

本番実装〜運用フェーズでの動き方

PoCで一定の精度・効果が確認できたら、本番環境への実装フェーズに移ります。ここからはAIエンジニアが主導する場面が増え、システムとしての安定性・拡張性を重視した実装、セキュリティ対策、負荷試験などを行います。リリース後は、モデルの精度が劣化していないかを継続的にモニタリングし、必要に応じて再学習・改善を行う運用フェーズに入ります。

小規模なプロジェクトでは1人が複数フェーズを一貫して担当することもありますが、プロジェクトが大きくなるほど、フェーズごとの分業が明確になっていく傾向があります。

AIエンジニアの仕事で地味だが重要な業務

案件単位の流れが分かったところで、最後にAIエンジニアの仕事内容の中でも、あまり注目されないものの実際には工数の大部分を占める業務について触れておきましょう。

データ前処理・クレンジングが工数の大半を占める実態

AIエンジニアの仕事というと、モデルを構築する華やかな作業をイメージしがちですが、実際の開発現場ではデータの前処理・クレンジングに多くの時間が使われます。欠損データの扱い方1つで精度が大きく変わることもあり、地道にデータと向き合う作業が仕事内容の土台になっています。

ドキュメント化・障害対応・チーム内コミュニケーション

モデルの実装以外にも、以下のような業務がAIエンジニアの日常には含まれています。

  • 実装内容・処理フローをドキュメントに残す作業
  • 本番環境でエラーが発生した際の原因調査・対応
  • データサイエンティストやビジネス側の担当者との仕様のすり合わせ

こうした業務は目立ちにくいものの、システムを安定的に動かし続けるうえでは欠かせない仕事内容です。つまり、AIエンジニアという仕事に向いているかどうかを判断する際は、モデル開発そのものだけでなく、こうした地道な業務にどれだけ興味を持てるかも1つの基準になるといえます。

まとめ

  • AIエンジニアの仕事内容は、AI・機械学習モデルを実際に動くシステムに組み込み、継続的に使える状態にすること
  • 1日の流れは「データを整える」「モデルを作る」「システムに組み込む」の3つの作業を、案件のフェーズに応じて行き来しながら進む
  • 仕事内容は「データ収集・前処理」「モデル開発」「システム実装」「運用・改善」の4フェーズに整理でき、データ前処理だけで工数の3〜4割を占めることもある
  • 生成AI時代はRAG・AIエージェント構築という新しい業務が増え、「モデルを作る」から「既存のAIを組み込む」へ比重がシフトしている
  • 仕事は一人で完結せず、データサイエンティスト・PdM・インフラエンジニアと役割分担しながら進める
  • PoCから本番運用まで、プロジェクトのフェーズによって関わり方が変化する

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この記事を書いた人

慶應義塾大学で金融工学を専攻。 卒業後はスタートアップのデータサイエンティストとして、AI・データ活用コンサルティング事業などに従事。 その後、株式会社セブン&アイ・ホールディングスにて、小売・物流事業におけるAI・データ活用の推進に貢献。 株式会社リベルクラフトを設立し、AIやデータサイエンスなどデータ活用領域に関する受託開発・コンサルティングや法人向けトレーニング、教育事業を展開。

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