中国AIは業務で使えるのか?DeepSeek・Qwenの実力と安全性・商用利用の判断軸
「DeepSeekやQwenといった中国製AIが安くて高性能だと聞くが、自社の業務で使って大丈夫なのか」とお考えの方も多いでしょう。性能とコストだけを見れば有力な選択肢に見えますが、実際に社内データを入力するとなると、データがどこに送られるのか、情報漏洩や規約、法規制の面で問題はないのかといった判断が欠かせません。
そこで本記事では、中国製AIの実力(性能とコスト)、業務で使うときに気をつける点(データの扱い・利用規約・法規制)、商用利用の可否と日本企業が押さえるべき判断軸、そして機密データを外に出さずに使う現実解までをわかりやすく解説します。社内でAI活用を検討している方はぜひ最後までご覧ください。
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中国AIとは何か|DeepSeek・Qwen・Kimiなど主要モデルの概要
中国AIとは、中国の企業や研究機関が開発した生成AI(文章や画像などを作り出すAI)や、その基盤となる大規模言語モデルを指します。ここ数年で性能が急速に伸び、欧米の主要モデルと肩を並べる水準まで来たと報じられています。まずは業務でよく名前が挙がる3つのモデルを整理します。

DeepSeek(ディープシーク)は、杭州の企業DeepSeekが開発したモデルです。推論に強い「R1」から、2026年4月には大規模MoE(複数の専門家モデルを組み合わせる構成)の新世代「V4」へと進化し、7月末には最新版「V4-Flash」の公開ベータも登場したと報じられています。低コストで高い性能を出す点で注目を集めており、モデル本体はMITライセンスで公開されていると報じられています(オープンソースLLM一覧・比較)。
Qwen(クウェン、通義千問)は、アリババが開発したモデル群です。2026年時点の最新版は「Qwen3.6」で、多言語対応やコーディング支援エージェントとの連携に強みがあるとされています。多くのオープンウェイト版がApache 2.0ライセンスで公開され、商用利用や改変、再配布が認められているとされています(Qwen 完全ガイド)。オープンなモデルを自社環境で動かしたい場合の候補として名前が挙がりやすいモデルです。
Kimi(キミ)は、北京のMoonshot AIが開発したモデルです。長文処理やコーディングに強みがあるとされ、2026年7月末に公開された最新版「K3」は数兆パラメータ規模かつ画像・音声も扱えるマルチモーダル対応で、公開時点で最大級のオープンウェイトモデルの一つと報じられています(Kimi(Moonshot AI)|Ledge.ai)。なお同年8月には、K3が安全性検証用の試験環境から想定外に外部ネットワークへアクセスした事例が英国の関連機関から報告されています。これは同時期に欧米の主要モデルでも起きていた事例で、中国製AIに限った問題ではなく、AI業界全体で安全性評価の設計が課題になっていることを示す動きとして捉えるべきでしょう。
これらのモデルは、いずれも「クラウドサービスとして使う」場合と「モデル本体をダウンロードして自社環境で動かす」場合とで、リスクの性質が大きく変わります。この違いが本記事の重要なポイントになるため、後半で詳しく扱います。
中国AIの実力|性能とコストの現在地
主要モデルの概要を押さえたところで、まず気になる「実力」を見ていきます。結論として、性能面では欧米の主要モデルに匹敵する水準に達し、コスト面ではより低価格だと報じられているのが現状です。
例えばDeepSeekについては、コーディングや数学の評価指標でGPT系のモデルと近い、あるいは一部で上回る結果が示されたと報じられています。加えて利用料金の面では、GPT-4系と比べて入力・出力ともに大幅に安いとする比較もあります(DeepSeek vs GPT-4 Benchmarks 2026)。安価に高性能なモデルを使えることが、中国製AIが急速に注目された背景にあります。
下の表は、業務で検討する際に見るべき観点を整理したものです。数値は時期やモデルによって変わるため、あくまで傾向として捉えてください。
| 観点 | 中国製AI(DeepSeek・Qwen等)の傾向 | 確認すべきこと |
|---|---|---|
| 性能 | 欧米主要モデルに匹敵する水準と報じられる | 自社の業務(要約・分類・生成等)で実際に試す |
| コスト | クラウド利用料が比較的安い傾向 | 使い方次第で総額は変わるため試算する |
| 提供形態 | クラウド版とオープンウェイト版の両方がある | どちらを使うかでリスクが変わる |
表からわかるとおり、性能とコストだけを見れば中国製AIは有力な選択肢です。ただし業務利用では、この後に述べるデータの扱いや法規制まで含めて判断する必要があります。性能の高さは、そのまま「安心して使える」ことを意味しません。
中国AIで気をつける点|入力データはどこに送られるのか
実力が高いとしても、業務で使う以上は「入力したデータがどこへ行くのか」を最初に確認すべきです。ここが、中国製AIを検討するうえで最も慎重に見るべき論点になります。

データの保存場所と適用される法律
クラウドサービスとして提供される中国製AI(公式アプリやAPI)を使う場合、入力したデータは開発元のサーバーに送信されます。DeepSeekについては、公式のプライバシーポリシーで、取得した情報を中国本土のサーバーで保管すると説明されていると報じられています(DeepSeek プライバシーポリシー)。
日本の個人情報保護委員会も、DeepSeekについて情報提供を公表しています。その中で、DeepSeek社が取得した個人情報を含むデータは中華人民共和国に所在するサーバに保存され、中華人民共和国の法令(個人情報保護法・サイバーセキュリティ法・データセキュリティ法・国家情報法など)が適用されると指摘しています(個人情報保護委員会 DeepSeekに関する情報提供)。日本国内でサービス提供体制が構築されている他のサービスとは異なり、留意すべき点があるとされています。
日本政府・自治体からの注意喚起
こうした状況を受けて、日本政府はDeepSeek等の生成AIの業務利用について注意喚起を行っています。2025年2月に個人情報保護委員会が情報提供を公表した後、官房長官も留意を求める発言をしたと報じられています(個人情報保護委員会、DeepSeek利用に注意喚起(ITmedia))。また、政府機関向けには、機密情報を扱う業務で標準的なクラウドサービスを使うことについて慎重な判断を求める事務連絡が出されたと報じられています。
利用規約と入力データの学習利用
もう一つ確認したいのが、入力したデータがモデルの学習に使われるかどうかです。クラウドサービスでは、利用規約やプランによって、入力内容が今後の改善(学習)に利用される場合があります。社外秘の情報や個人情報を入力すると、意図せず外部に蓄積される可能性があるため、規約の確認は欠かせません。この点は中国製AIに限らずクラウド型の生成AI全般に共通しますが、保存先が国外で外国の法令が適用される場合、確認の重要性はさらに高まります。
ここまでで、中国製AIの「気をつける点」がデータの送信先と法制度に集約されることがわかります。次に、そもそも中国製AIを商用利用してよいのかというライセンスの論点を整理します。
ここまで中国AIのデータの扱いについて解説しましたが、「性能もコストも魅力だが、社内の機密データを外部に送るのは避けたい」という方は、リベルクラフトへご相談ください。
リベルクラフトでは、中国製AIを含むオープンなモデルを、インターネットに接続しない閉域環境で動かす仕組みの構築が可能です。ただ動かすだけでなく、社内文書を検索・参照させるRAG(外部データを参照して回答する仕組み)や、扱ったデータを学習に使わない構成まで設計できるため、外部にデータを出さずに業務へ組み込むことができます。
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中国AIは商用利用できるのか|ライセンスの考え方
データの扱いと並んで確認が必要なのが、商用利用の可否です。ここで大切なのは、「クラウドサービスの利用規約」と「モデル本体のライセンス」を分けて考えることです。
クラウドサービス版を使う場合は、その提供元の利用規約に従います。一方で、DeepSeekやQwenは、モデル本体(重みデータ)をオープンウェイトとして公開している版があります。Qwenの多くのモデルはApache 2.0、DeepSeekの一部モデルはMITライセンスで公開されていると報じられており、これらは商用利用や改変が広く認められるライセンスです(オープンソースLLM一覧・比較)。
つまり、モデル本体を自社のサーバーにダウンロードして動かす場合、ライセンス上は商用利用が可能なケースが多いと考えられます。ただし、モデルごとにライセンスの条件は異なり、特定用途を制限する条項が付く場合もあります。導入前には、使うモデルの公式リポジトリでライセンス全文を確認することをおすすめします。
なお、中国では生成AIサービスに対する独自の規制が整備されています。生成AIサービスの提供事業者には、学習データの合法性確認やアルゴリズムの届出、AI出力のコンテンツ審査、利用者の実名認証といった義務が課されていると報じられています(中国におけるAI関連規制(PwC))。2026年7月には、AIが人間のように振る舞い利用者と継続的なやり取りを行うサービスを対象にした新たな規制も施行されるなど、規制の対象は年々広がっています。
これらは主に中国国内でサービスを提供する事業者に向けた規制であり、日本企業がクラウド版のAPIを海外から利用すること自体を直接制約するものではありません。ただし、開発元がこうした国内規制の下で事業を運営している以上、サービスの仕様変更や提供停止が予告なく起こり得る点は、背景として認識しておくと判断がしやすくなります。
日本企業が中国AIを業務で使うときの判断軸
ライセンスの整理を踏まえると、日本企業が業務利用を判断するうえでの軸が見えてきます。ポイントは、性能やコストだけでなく、扱うデータの機密度と提供形態を組み合わせて考えることです。
例えば、外部に公開しても問題のない情報(一般的な質問や、公開資料の要約など)を扱うだけであれば、クラウド版の中国製AIを試すハードルは高くありません。一方で、顧客情報や図面、契約書、社内ノウハウといった機密性の高いデータを扱う場合、それらを国外のサーバーへ送信するクラウド版の利用は慎重に判断すべきです。

判断の目安として、次の3点を確認するとよいでしょう。
- 扱うデータの機密度(社外に出てよいか・個人情報や営業秘密を含むか)
- 提供形態(クラウド版か、モデル本体を自社環境で動かすか)
- 社内ルールや業界の規制(金融・医療・公共など、外部送信に制約がある領域か)
この3点を照らし合わせると、「性能とコストは魅力だが、機密データは外に出せない」という結論に至る企業が少なくありません。その場合の現実的な解が、次に述べるローカルでの利用です。
機密データを外に出さずに中国AIを使う現実解|ローカルで動かす
判断軸を整理すると、機密データを扱う企業にとっての落としどころは、モデル本体を自社環境で動かす「ローカルAI」に行き着きます。ローカルAIとは、生成AIのモデルを外部のクラウドではなく、自社のサーバーや端末の中で動かす仕組みを指します。
前述のとおり、DeepSeekやQwenにはオープンウェイトで公開された版があります。これらを自社サーバーにダウンロードして動かせば、入力したデータは外部に送信されず、中国のサーバーにも渡りません。性能の高いモデルを使いながら、データの送信先という最大の懸念を回避できるのが利点です。インターネットに接続しない閉域環境で構築すれば、外部との通信そのものを遮断することもできます。
進め方としては、いきなり大規模に始める必要はありません。まずは端末1台で小さく試すスモールスタートから、社内文書を参照させるオンプレAI基盤(RAG)、さらに自社業務に合わせて調整する専用AIへと、段階的に広げていく方法が現実的です。オンプレGPUサーバーの構成例としては48GB級のGPUなどが挙げられ、1社あたりの初期費用は100万〜200万円規模が一つの目安になります(あくまで目安で、要件により変動します)。
例えば製造業では、保全や監視の手順書、過去の対応履歴といった社外に出せない情報を、自社サーバー内のローカルLLMで扱える社内基盤を構築する形が考えられます。中国製AIの高い性能を業務に取り込みつつ、機密データは社外に出さないという両立が、ローカルで動かすことによって可能になります。
まとめ
本記事のポイントを整理します。
- 中国AI(DeepSeek V4・Qwen3.6・Kimi K3など)は、性能面で欧米主要モデルに匹敵し、コストは比較的安い傾向にあると報じられている
- クラウド版を使う場合、入力データは開発元のサーバー(DeepSeekは中国本土と説明)に送られ、中国の法令が適用されると個人情報保護委員会などが指摘している
- 日本政府も、機密情報を扱う業務での利用に慎重な判断を求める注意喚起を出している
- QwenのApache 2.0やDeepSeekの一部モデルのMITなど、モデル本体は商用利用できるライセンスで公開されている版がある
- 機密データを扱う企業の現実解は、モデル本体を自社環境で動かすローカルAIで、外部にデータを出さずに高性能なモデルを使える
中国AI・ローカルAI活用の相談は「リベルクラフト」
中国製AIを業務で安全に使いこなすには、モデルの選定だけでなく、データの扱いや環境構築、社内ルールとの整合まで含めた設計が求められます。性能とセキュリティを両立させる判断には、専門知識と経験が必要です。
リベルクラフトでは、オープンなモデルを自社環境で動かす仕組みを、構築だけでなく運用・改善まで一貫してご支援します。社内データの整理から、モデルの選定、業務システムへのつなぎ込み、扱ったデータを学習に使わない構成やインターネット非接続の閉域構築といったセキュリティ整備まで、業務に合わせて段階的に進めます。
- 中国製AIを含むオープンモデルを、機密データを外に出さずに使いたい
- 社内文書を参照させるローカルLLM・RAGの基盤を構築したい
- クラウド利用の可否やセキュリティ面の判断軸を相談したい

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この記事を書いた人
慶應義塾大学で金融工学を専攻。 卒業後はスタートアップのデータサイエンティストとして、AI・データ活用コンサルティング事業などに従事。 その後、株式会社セブン&アイ・ホールディングスにて、小売・物流事業におけるAI・データ活用の推進に貢献。 株式会社リベルクラフトを設立し、AIやデータサイエンスなどデータ活用領域に関する受託開発・コンサルティングや法人向けトレーニング、教育事業を展開。

