データサイエンティストはなくなる?求人データで検証する客観的な結論

「データサイエンティストはAIに取って代わられて、なくなるのではないか」と不安に感じている方も多いでしょう。実際に「データサイエンティスト いらない」「供給過多」といった言葉で検索されることも増えており、これから目指す人ほど判断に迷いやすい状況です。

ただ、こうした議論の多くは印象論で語られていて、実際の求人がどう動いているかという数字に触れたものはあまり見当たりません。

そこで本記事では、

・データサイエンティストがなくなると言われる理由

・米国と国内の求人データが実際に示していること

・AI時代に変わる役割と、これから必要になるスキル

について解説します。これからデータサイエンティストを目指す方、学習中の方は、ぜひ最後までご覧ください。

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データサイエンティストは「なくなる」と言われているが、結論はどうか

最初に結論からお伝えします。

「なくなる」「いらない」と言われ始めた背景

データサイエンティストがなくなると言われるようになった直接のきっかけは、生成AIの普及です。分析コードの生成やグラフの作成、簡単な考察までAIが担えるようになり、「人が分析する意味が薄れるのではないか」という見方が広がりました。

加えて、2010年代に「21世紀で最もセクシーな職業」と紹介されて志望者が急増した反動もあります。人材の供給が増えた一方で、企業側が求める水準は上がり続けたため、「未経験から目指しても仕事がないのではないか」という不安が語られるようになりました。

本記事の結論:職種はなくならないが、「汎用的なデータサイエンティスト」の枠は狭くなっている

求人データを確認すると、実態は「なくなる・なくならない」の二択では説明できません。

長期的な需要予測は強い一方で、国内の足元では「データサイエンティスト」という包括的な職種名での募集そのものが減り、役割ごとに細分化した募集に置き換わっています。 つまり消えつつあるのは職種ではなく、何でも一人でこなす「汎用的なデータサイエンティスト」という括りの方です。

この記事では、その根拠となる2つのデータを次章以降で確認していきます。

データサイエンティストがなくなると言われる3つの理由

結論をお伝えしたので、まずは不安の根拠になっている理由を整理します。ここを押さえておくと、後半のデータ検証の意味が理解しやすくなります。

AI・AutoMLによる分析業務の自動化

AutoMLとは、機械学習モデルの構築を自動化する仕組みを指します。 特徴量の選択やアルゴリズムの比較、パラメータの調整といった、従来は経験を要した工程を自動で進められます。

さらに生成AIの登場で、分析コードの作成やエラーの修正、可視化までAIに任せられるようになりました。手を動かす工程が自動化されたことで、「人の出番が減るのではないか」という見方につながっています。

ただし、自動化されたのは「決められた目的に向けてモデルを作る」部分です。何を予測すれば事業の役に立つのか、どの評価指標で良し悪しを決めるのか、学習に使ったデータに本番では手に入らない情報が混ざっていないか、といった確認は、ツールが自動で判断してくれるものではありません。AutoMLで作ったモデルの精度が高すぎるときに、データの作り方を疑えるかどうかは、使う人の知識に左右されます。

BIツールの普及によるデータ分析の民主化

TableauやLooker Studioに代表されるBIツールが普及し、専門職に依頼しなくても現場の担当者が自分で数字を確認できる環境が整いました。

以前は「売上を地域別・商品別に見たい」という依頼がデータサイエンティストに集まっていましたが、今はダッシュボードを見れば済むケースが増えています。定型的な集計や可視化の依頼が減ったことが、必要性への疑問につながっています。

一方で、ダッシュボードで数字の変化が誰にでも見えるようになると、「なぜ先月から下がったのか」「この施策は本当に効いたのか」という、一段深い問いが現場から出てくるようになります。見える化が進んだ職場ほど、原因を掘り下げる分析や、施策の効果を正しく測る設計の依頼が増えるという流れです。BIツールが置き換えたのは定型的な集計であり、分析の仕事全体ではありません。

供給過多・人材の淘汰への懸念

学習環境が整い、データサイエンスを学んだ人材の数は増えました。一方で企業が採用したいのは、統計やプログラミングに加えてビジネス理解まで備えた人材です。

このギャップから、「学んだ人は増えたのに採用されるのは一部だけ」という状況が生まれ、供給過多という言葉で語られています。

ここで起きているのは、人が余っているというより、求められる水準が上がったことによるすれ違いです。講座や書籍で分析手法を一通り学んだ段階と、企業が即戦力として期待する段階の間には距離があります。学んだ手法を実際の業務に近い題材で使い、どんな判断に役立てたかまで説明できる人は、今も多くありません。

データサイエンティストがなくなると言われる3つの理由と実際に置き換わった範囲

3つの理由を並べると、どれも仕事の一部が置き換わったことを指しており、仕事全体が消えたことを示すものではないと分かります。AIとAutoMLが置き換えたのは手を動かす工程、BIツールが置き換えたのは定型的な集計、供給過多と言われる背景にあるのは求められる水準の上昇です。

なお、AIとデータサイエンティストの関係をより広く整理した内容は別記事にまとめています。

参照記事:データサイエンティストはAIの発展でなくなるのか。AI時代に生き残るための2つの解

求人データで見る、データサイエンティストは本当に減っているのか

理由は整理できましたが、ここまではいずれも「そう言われている」という話です。ここからは実際の求人データを確認します。

データサイエンティスト求人の長期予測と国内足元の動向

1. 米国労働省(BLS)の予測:2025〜2035年で雇用35%増

米国労働省労働統計局(BLS)が公表している職業別の見通しでは、データサイエンティストの雇用は2025年から2035年にかけて35%増加すると予測されています。 これは全職業平均を大きく上回る伸び率です。あわせて、この10年間で年平均およそ24,800件の求人が生まれると見込まれています。

BLSは伸びの理由として、データに基づく意思決定への需要拡大と、企業がAIを活用した仕組みを業務に組み込み続けることを挙げています。AIの普及は、この予測にとって需要を減らす要因ではなく、増やす要因として扱われている点が重要です。

出典:U.S. Bureau of Labor Statistics「Data Scientists : Occupational Outlook Handbook」

2. 国内の足元:2026年3〜5月の求人数は前3カ月比96%

一方、国内の直近の動きは単純な右肩上がりではありません。

パーソルキャリアが公表している「ITエンジニア中途採用マーケットレポート」(2026年6月24日発行)によると、データサイエンス領域の2026年3〜5月の求人数は、前の3カ月と比べて96%と減少傾向にあります。

同レポートでは、その内訳としてもう1つ重要な変化が報告されています。「データサイエンティスト」という包括的な職種名ではなく、データアナリスト、機械学習エンジニア、データエンジニア、AIプロダクトマネージャーというように、機能や役割ごとに細分化した形で募集する企業が増えているという点です。

出典:doda「ITエンジニア中途採用マーケットレポート(2026年6月発行)」

3. 2つのデータが示すこと:減っているのは「職種」ではなく「括り」

一見すると、長期では35%増、足元では96%と、逆の動きに見えます。ただ、2つを並べると一貫した構造が見えてきます。

  • データを扱う仕事そのものへの需要は、長期的にはむしろ拡大していく見通し
  • ただし「データサイエンティスト」という1つの箱で採用する形は、国内では縮小しつつある
  • 代わりに、分析・機械学習・基盤構築・AI活用というように、役割を明示した募集が増えている

なお、2つのデータを読むときには前提の違いにも注意が必要です。BLSの数字は米国の雇用についての10年間の予測であり、日本の求人数をそのまま示すものではありません。また、dodaの96%は直前の3カ月との比較なので、季節や景気による短期的な増減も含まれます。1回の数字で「減った」「増えた」と判断するのではなく、長期の方向と足元の募集の形を分けて読むことが大切です。

つまり、なくなりつつあるのは仕事ではなく、「何でも一人でこなす汎用職」という募集の仕方です。「データサイエンティストはなくなる」という言葉の実態は、この職種の分化を指していると捉えると、両方のデータが無理なく説明できます。

これから目指す人にとっては、「データサイエンティストになる」と漠然と考えるより、どの役割で強みを持つかを決めて学ぶ方が、求人と噛み合いやすい状況になっているといえます。

データサイエンティストという仕事がなくならない理由

求人が細分化していることは分かりました。ここでは、データを扱う仕事そのものが今後も残り続ける構造的な理由を3つ整理します。

AIは課題設定と意思決定の責任を引き受けられない

生成AIは、与えられた問いに対して分析や考察を返すことは得意です。一方で、「そもそも何を課題として設定するか」「その結果をもとにどの施策を選ぶか」という判断は、事業の文脈と責任を持つ人でなければ担えません。

例えば「解約率が上がっている」という状況で、価格の問題なのか、サポート品質なのか、そもそも獲得している顧客層がずれているのか。この仮説の立て方によって、分析すべきデータも打ち手も変わります。ここはAIに投げて終わりにできない部分です。

工程AIが担える範囲人が担い続ける範囲
課題設定論点の洗い出しの補助事業状況を踏まえた課題の選定
データ準備前処理コードの生成データの信頼性・欠損の妥当性判断
モデル構築アルゴリズム選定・調整の自動化目的に照らした評価指標の設計
解釈・提案結果の要約・言語化意思決定への接続と責任

この表からわかるように、AIが強いのは手を動かす工程で、判断と責任が絡む工程は人の側に残っています。

DX推進とデータ活用企業の増加

データを扱う人材の需要は、AI技術そのものよりも、企業側のデータ活用の広がりに連動します。基幹システムの刷新やクラウド移行が進み、これまで分散していたデータが扱える状態になった企業では、分析して施策に変える人材が新たに必要になります。

BLSが挙げていた「データに基づく意思決定への需要拡大」も、この流れと同じ構造です。

例えば、紙や表計算ファイルで管理していた受注や在庫の記録がシステムにまとまると、「どの商品がいつ欠品しやすいか」「発注量をどう決めれば在庫を減らせるか」といった問いに、初めてデータで答えられるようになります。データが使える状態になった瞬間に、それを分析して業務の決め方を変える役割が生まれるわけです。

生成AIの導入も同じ流れの中にあります。社内の文書や記録をAIに読ませて業務に使うには、どのデータを使ってよいか、回答の品質をどう測るかを決める人が必要です。AIの導入が進むほど、データを扱える人材の出番が増える構造になっています。

IT人材不足という構造的な背景

経済産業省が公表した「IT人材需給に関する調査」(2019年3月・みずほ情報総研への委託調査)では、2030年にIT人材が最大で約79万人不足すると試算されています。 発表から年数が経った推計ではありますが、国内の労働人口が減少していく前提は変わっていません。

出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」

分析業務の一部がAIで効率化されても、その効率化を設計・運用できる人材が余るほど供給されている状況ではない、というのが前提としてあります。

ここまでデータサイエンティストの求人動向と需要の背景について解説しましたが、「求人自体はあると分かっても、AI時代に通用するスキルが自分に身についているか分からない」という方は、Craft Collegeをご検討ください。

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AIと共存する時代に、データサイエンティストに求められる役割の変化

なくならない理由を確認できたので、次に「では何が変わるのか」を見ていきます。

データサイエンティストの役割の変化

「分析する人」から「分析を設計し、AIに実行させる人」へ

これまでのデータサイエンティストの価値は、分析を実行できること自体にありました。コードを書き、モデルを組み、結果を出すまでの技術が希少だったためです。

生成AIの普及によって、この実行部分の価値は相対的に下がりました。代わりに評価されるのは、次のような部分です。

  • 何を検証すべきかを決め、分析の設計に落とし込む力
  • AIに適切な指示を出し、出力を業務で使える形に整える力
  • AIが出した結果が妥当かどうかを検証する力

AIを使う側に回れるかどうかが、市場価値の分かれ目になりつつあります。 分析の実行だけを担っていた層は代替の影響を受けやすく、設計と検証を担える層は逆にAIによって扱える範囲が広がります。

職種の細分化にどう向き合うか

前述のdodaのレポートが示したように、募集は役割ごとに分かれてきています。代表的な4つの方向性は次の通りです。

  • データアナリスト:事業指標の分析と可視化を通じて意思決定を支える
  • 機械学習エンジニア:モデルの開発と本番運用までを担う
  • データエンジニア:分析の土台になるデータ基盤を構築する
  • AIプロダクトマネージャー:AIを組み込んだサービスの企画と推進を担う

これから学ぶ方にとって、この分化は不利な変化とは限りません。求められる範囲が明示されるため、何をどこまで習得すれば応募条件を満たせるかが読みやすくなったともいえます。まずは軸足を1つ決めて、そこから隣接領域に広げていく順序が現実的です。

実際の求人を見るときは、職種名ではなく必須要件の中身で読み替えると判断しやすくなります。

  • SQLとBIツール、事業指標の設計が中心に書かれている求人は、実質的にデータアナリストの募集
  • 学習パイプラインやモデルの本番運用、MLOpsへの言及がある求人は、機械学習エンジニアの募集
  • データ基盤やETL、クラウドのデータウェアハウスが並ぶ求人は、データエンジニアの募集
  • 生成AIを使ったサービス企画や、社内へのAI導入推進が主語になっている求人は、AIプロダクトマネージャーに近い募集

同じ「データサイエンティスト募集」という見出しでも、求められる中身は大きく異なります。応募前に必須要件を分解しておくと、自分の学習の足りない部分がはっきりします。

将来性の観点からキャリアの選び方を整理した内容は、別記事でも解説しています。

参照記事:データサイエンティストの将来性が高い3つの理由。習得するべきスキルと学習方法も

これから生き残るデータサイエンティストが身につけるべき3つのスキル

役割の変化が分かったところで、その変化に対応するために必要なスキルを整理します。3つのスキルは、分析の仕事の流れである課題設定、実行、検証のそれぞれに対応しています。

3つのスキルが課題設定と実行と検証のどこで効くかを示す図

1. ビジネス課題を設計する力

AIに代替されにくい領域が、課題設定です。事業の状況を理解し、どの数字を動かせば成果につながるかを定義し、分析可能な問いに翻訳する力が求められます。

身につけるには、分析の練習問題を解くだけでは足りません。実際の事業データに近い題材で、「誰のどの意思決定を助けるための分析か」を毎回言語化する訓練が有効です。

例えば「売上を伸ばしたい」という依頼をそのまま分析しようとすると、どのデータを見ればよいかが定まりません。これを「既存顧客のうち、2回目の購入に進む割合が下がっているのはどの層か」と言い換えると、使うデータも、結果を受けて打つ施策も具体的になります。漠然とした依頼を、答えの出る問いに翻訳する練習を重ねることが、この力を伸ばす近道です。

2. 生成AI・AIツールを実装に組み込む力

分析の実行をAIに任せられる前提で、AIを業務に組み込む設計ができるかが問われます。具体的には次のような技術です。

  • 生成AIのAPIを使った業務プロセスへの組み込み
  • RAG(検索拡張生成)による社内データを踏まえた回答の実現
  • AIの出力品質を評価し、改善する仕組みづくり

求人票でも、機械学習の経験に加えてLLMの活用経験を挙げる企業が増えています。

学び始めの段階では、大がかりなシステムを作る必要はありません。社内規程や製品マニュアルのような文書を題材に、質問に答える小さな仕組みを作り、どんな質問で誤った回答が出るかを記録してみるだけでも、組み込みと評価の両方を経験できます。うまくいかなかった例を集めて改善する過程こそ、求人票が求める「活用経験」の中身です。

3. 統計・データ分析の基礎

AIが出した結果を検証するには、統計と分析の基礎が欠かせません。ここが弱いと、もっともらしく見える誤った結論をそのまま受け入れてしまいます。

  • 記述統計と推測統計の基本
  • 仮説検定と信頼区間の考え方
  • 回帰・分類モデルの評価指標の読み方

AIの出力を疑える人になるために、基礎はむしろ重要度が上がっています。 実行をAIに任せるほど、検証する側の目が成果を左右するためです。

例えば、生成AIに分析を頼むと「施策の前後で売上が伸びたので効果があった」という結論が返ってくることがあります。統計の基礎があれば、同じ時期に季節要因や他の施策が重なっていないか、比べる対象を用意できているかを確認しようと考えられます。こうした問いを立てられるかどうかが、AIを使う側に回れるかどうかの分かれ目です。

未経験からの学習の進め方は、以下の記事でも詳しく解説しています。

参照記事:未経験からデータサイエンティストになるには?3つのルートと学習ロードマップ

まとめ

本記事の内容を整理します。

  • データサイエンティストという職種そのものはなくなっておらず、米国労働省の予測では2025〜2035年で雇用35%増、年間約24,800件の求人創出が見込まれている
  • 一方、国内では2026年3〜5月の求人数が前3カ月比96%と減少傾向にあり、「データサイエンティスト」という包括的な募集は縮小している
  • 減っているのは仕事ではなく、何でも一人でこなす汎用職という括り。募集はデータアナリスト、機械学習エンジニア、データエンジニア、AIプロダクトマネージャーへと細分化している
  • 課題設定と意思決定への接続はAIに代替されにくく、分析の実行を担うだけの働き方は影響を受けやすい
  • これから求められるのは、課題を設計する力、生成AIを実装に組み込む力、AIの出力を検証できる統計・分析の基礎の3つ

「なくなるかどうか」を心配するより、どの役割で強みを持つかを決めて学ぶ方が、今の求人と噛み合います。

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この記事を書いた人

慶應義塾大学で金融工学を専攻。 卒業後はスタートアップのデータサイエンティストとして、AI・データ活用コンサルティング事業などに従事。 その後、株式会社セブン&アイ・ホールディングスにて、小売・物流事業におけるAI・データ活用の推進に貢献。 株式会社リベルクラフトを設立し、AIやデータサイエンスなどデータ活用領域に関する受託開発・コンサルティングや法人向けトレーニング、教育事業を展開。

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