Gemini APIの使い方と料金。キー発行から無料枠の読み方、業務でのデータの扱いまで
Gemini APIのサンプルコードは動いたものの、どのモデルを選び、月にいくらかかり、社内のデータを入れてよいのかを決めきれずにいる方も多いでしょう。
しかも2026年は、Gemini APIの前提が何度も変わりました。APIキーの種類が切り替わり、新しいInteractions APIが標準になり、有料枠は前払いが基本になっています。1年前の解説記事の手順では、つまずく箇所が出てきます。
そこで本記事では、
- Google AI StudioでのAPIキー発行から、Pythonでの最初の呼び出しまで
- Gemini APIのモデルと、考える量(thinking_level)の選び方
- 料金表と無料枠の読み方、有料枠への移り方
- 業務で使う前に確認する、データの扱いとキーの管理
について解説します。本記事のコードと数値は、すべて実際に実行して得た出力です。環境はApple M1 Pro、Python 3.11.6、google-genai 2.25.0、pydantic 2.13.5、実行日は2026年9月23日です。料金・モデル名・規約は、同じ日にGoogleの公式ドキュメントで確認した値を使っています。
Gemini APIを使った社内向けのAI開発を1人で進めていて、モデル選びやデータの扱いが妥当か確かめる相手がいないという方は、リベルクラフトへご相談ください。
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Gemini APIとは。Google AI Studio・Agent Platformとの関係
Gemini APIとは、GoogleのGeminiモデルを自分のプログラムから呼び出すための窓口(API)です。正式名はGemini Developer APIで、利用者はGoogleが公開しているPython・JavaScript・Go・JavaのSDKか、RESTの形式でモデルを呼び出します。
Geminiのような大規模言語モデル(LLM)そのものの仕組みは、以下の記事で解説しています。
参照記事:LLM(大規模言語モデル)とは?企業での活用方法と事例・利用時の注意点も解説
Gemini APIでできること
2026年9月時点の最新モデルであるGemini 3.8 Flashを例にすると、公式のモデル仕様ページには次の機能が並んでいます(出典:Gemini 3.8 Flash)。
- テキスト・画像・動画・音声・PDFを入力し、テキストを出力する
- 入力は最大1,048,576トークン、出力は最大65,536トークンまで扱える
- JSON Schemaに沿った形で出力させる(構造化出力)
- 自分で定義した関数を、モデルに呼ぶかどうか判断させる(関数呼び出し)
- Google検索の結果を根拠にして回答させる(グラウンディング)
- 答える前に内部で推論させ、その量を調整する(思考)
関数呼び出しで社内のツールやデータにつなぐ場合、複数のAIから同じツールを使えるようにする標準規格としてMCPがあります。
参照記事:MCPとは。AIを社内のデータ・ツールに安全につなぐ仕組みを解説
Google AI StudioはGemini APIの管理画面
Gemini APIを調べると、必ずGoogle AI Studioという名前が一緒に出てきます。Google AI Studioとは、ブラウザ上でGeminiを試し、Gemini APIのキー・プロジェクト・課金・利用量を管理する画面です。APIキーの発行も、有料枠への切り替えも、利用量やログの確認も、この画面から行います。

Gemini APIとは別に、Google Cloudには企業向けの入口としてGemini Enterprise Agent Platform(旧Vertex AI)があります。両者の違いは、料金とデータの扱いを説明したあとで比べます。
Gemini APIの始め方。キー発行から最初の呼び出しまで
ここまでGemini APIの位置づけを整理しました。ここからは、実際にキーを発行して1回呼び出すまでを3つの手順で進めます。
1. Google AI StudioでGemini APIキーを発行する
Google AI Studioに初めてログインして利用規約に同意すると、既定のGoogle Cloudプロジェクトとキーが自動で作られます。別のキーが必要なときは、API keysの画面で「Create API key」を押し、プロジェクトとキーの組を追加します(出典:Using Gemini API keys)。
ここで押さえておきたいのが、2026年にキーの種類が切り替わった点です。
- 2026年5月28日以降にGoogle AI Studioで作ったキーは、自動的にauth keys(サービスアカウントに紐づくキー)になる
- 利用するAPIを制限していない従来型のキー(標準キー)からのリクエストは、すでに拒否されている
- 公式ページには、2026年9月に標準キーからのリクエストをすべて拒否すると書かれている
以前に作ったキーをそのまま使っているプログラムは、auth keysへの移行が必要です。会社のGoogle Cloud組織のプロジェクトで「Create API key」が押せない場合は、キーの作成やサービスアカウントの作成に必要な権限が足りていません。プロジェクトの管理者に、公式ページに列挙された権限を含むロールを付けてもらいます。
2. キーを環境変数に置く
発行したキーは、コードに直接書かず環境変数に置きます。SDKは GEMINI_API_KEY か GOOGLE_API_KEY という環境変数を自動で読み込み、両方ある場合は GOOGLE_API_KEY が優先されます。
export GEMINI_API_KEY="発行したキー"
2つの変数が混在していると、意図しないキーで課金される原因になります。どちらか一方に揃えておくのが安全です。
3. SDKを入れて最初の呼び出しをする
SDKは pip install -U google-genai で入ります。次のコードで、Gemini 3.8 Flashに1回だけ問い合わせます。
from google import genai
client = genai.Client() # 環境変数 GEMINI_API_KEY を自動で読む
interaction = client.interactions.create(
model="gemini-3.8-flash",
input="Gemini APIとは何かを、エンジニア向けに2文で説明してください。",
store=False, # 会話履歴をサーバーに保存しない
)
print(interaction.output_text)
u = interaction.usage
print("入力", u.total_input_tokens, "出力", u.total_output_tokens, "思考", u.total_thought_tokens)
実行結果は次のとおりです。
Gemini APIは、Googleの最先端マルチモーダル基盤モデルをREST APIや主要言語のSDK経由でシステムに組み込める開発者向けインターフェースです。
テキストに加え画像・音声・動画の同時処理や極めて長大なコンテキストウィンドウに対応し、Function Callingや構造化出力(JSON等)を活用した高度なAI機能を容易に実装できます。
入力 18 出力 82 思考 366
注目したいのは最後の行です。回答の本文は82トークンでしたが、モデルはその前に366トークン分を内部で考えていました。この思考トークンは出力として課金されるため、料金を見積もるときに効いてきます。詳しくは料金の章で扱います。

Interactions APIとgenerateContentの違い
上のコードは client.interactions.create() を使っています。Interactions APIとは、2026年6月に一般提供が始まった新しい呼び出し方で、Googleは新規プロジェクトにこちらを推奨しています。従来の generateContent はlegacy(旧来)の扱いになりましたが、引き続きサポートされています(出典:Interactions API)。
2つの違いで業務に効くのは、次の3点です。
- 新しいモデル・ツール・エージェント機能は、今後Interactions APIで先に提供される
- 会話の続きを、前回のIDを渡すだけでサーバー側に持たせられる(
previous_interaction_id) - 既定でリクエストと応答がサーバーに保存される(
store=true)
3点目は、データの扱いの章で詳しく説明します。上のコードで store=False を付けているのはこのためです。
Gemini APIのモデルの選び方
Gemini APIを1回呼べたところで、次に決めるのはどのモデルで呼ぶかです。2026年9月時点では、テキストを扱うモデルだけでも多くの選択肢があります。
2026年9月時点の主なモデル
公式のモデル一覧と料金ページから、テキスト処理でまず候補になる4つを抜き出しました(出典:Models、Gemini Developer API pricing)。料金は有料枠の標準(Standard)で、100万トークンあたりの米ドルです。
| モデル(モデルコード) | 位置づけ | 入力単価 | 出力単価 | 無料枠 |
|---|---|---|---|---|
| Gemini 3.8 Flash(gemini-3.8-flash) | 安定版の最新。エージェント・長い処理向け | 0.75ドル | 3.75ドル | あり |
| Gemini 3.5 Flash-Lite(gemini-3.5-flash-lite) | 大量処理・抽出向けの低価格モデル | 0.30ドル | 2.50ドル | あり |
| Gemini 3.1 Flash-Lite(gemini-3.1-flash-lite) | 低価格モデル(テキスト・画像・動画の入力単価) | 0.25ドル | 1.50ドル | あり |
| Gemini 3.1 Pro Preview(gemini-3.1-pro-preview) | 上位のプレビュー版(20万トークン以下の単価) | 2.00ドル | 12.00ドル | なし |
この表から読み取れるのは、Proは単価がFlashの数倍になるうえ無料枠が無く、プレビュー版である点です。公式は、新規プロジェクトには3.5 Flash-Liteか3.8 Flashを使うよう案内しています。2.5系のモデルは、過去に使っていた利用者に提供を限っています。
GoogleのGemini以外も含めて各社のモデルを比べたい場合は、以下の記事にまとめています。
参照記事:【2026年最新】主要なLLMモデル8選一覧比較表。各モデルごとの用途も解説
thinking_levelで考える量を決める
Gemini 3.8 Flashは、答える前に内部で推論します。その量を決めるのが thinking_level で、low・medium・highの3段階を指定でき、既定はmediumです(出典:Gemini thinking)。
interaction = client.interactions.create(
model="gemini-3.8-flash",
input="...",
generation_config={"thinking_level": "low"},
)
公式ドキュメントは、費用や待ち時間を減らしたいときは max_output_tokens を小さくするのではなく、thinking_level を下げるよう案内しています。出力の上限に推論の途中で達すると、回答が途切れたり空になったりする一方で、それまでの思考トークンは課金されるためです。
問い合わせ分類で実測した正解数と費用
モデルと思考の深さで何が変わるのかを、業務でよくある処理で測りました。架空の問い合わせメール3通(システム障害・請求の誤り・機能要望)を、分類・緊急度・製品名・要約のJSONに変換させるタスクです。出力の形はPydanticで定義したJSON Schemaで固定し、各設定で3通を3回ずつ、計9件実行しました。正解は、分類・緊急度・製品名の3つがすべて一致した件数です。
class Ticket(BaseModel):
category: Literal["不具合", "請求", "機能要望", "その他"]
urgency: Literal["高", "中", "低"]
product: str = Field(description="言及された製品名。無ければ空文字")
summary: str = Field(description="40字以内の要約")
it = client.interactions.create(
model=model,
input="次の問い合わせメールを分類してください。\n\n" + text,
response_format={"type": "text", "mime_type": "application/json",
"schema": Ticket.model_json_schema()},
generation_config={"thinking_level": level}, # Flash-Liteでは指定しない
store=False,
)
1,000件あたりの費用は、実測したトークン数に上の表の単価を掛けて計算しています。
| モデルと思考の深さ | 正解 | 平均の応答時間 | 平均の思考トークン | 1,000件あたりの費用 |
|---|---|---|---|---|
| 3.8 Flash(low) | 9件中7件 | 2.68秒 | 145 | 0.761ドル |
| 3.8 Flash(medium) | 9件中8件 | 3.03秒 | 286 | 1.290ドル |
| 3.8 Flash(high) | 9件中9件 | 3.59秒 | 519 | 2.167ドル |
| 3.5 Flash-Lite(指定なし) | 9件中6件 | 1.38秒 | 0 | 0.143ドル |
入力は平均42トークン、回答本文の出力は49〜52トークンで、どの設定でもほぼ同じでした。費用の差を生んだのは思考トークンで、highはlowの約2.8倍、Flash-Liteの約15倍になりました。応答時間は、日本国内からGoogleのサーバーまでのネットワーク往復を含みます。
外れた件を確かめると、すべて同じ1通でした。「来週の支払いまでに訂正版をいただけますか」という請求のメールです。6件のうち5件は、正解を「中」としていた緊急度をモデルが「高」と判定したもので、残る1件はFlash-Liteが製品名の欄に「ライセンス」と入れたものでした。期限がある依頼を急ぎとみるかは、人によっても分かれるところです。同じ条件でもう1回実行したときは、lowが8件、mediumが9件、Flash-Liteが7件の正解で、回ごとに1件前後ぶれました。
そこで、指示に緊急度の基準を1行だけ足しました。「高=業務が止まっている、中=期限はあるが業務は止まっていない、低=期限の指定がない」という1行です。この条件で再実行すると、3.8 Flash(low)とFlash-Liteの両方が9件中9件になりました。1,000件あたりの費用は、それぞれ0.541ドルと0.149ドルです。

9件という小さな実験なので、モデルの優劣を決める根拠にはなりません。それでも、判断の基準があいまいなまま上位のモデルや深い思考に頼ると、費用だけが増えることは読み取れます。モデルは3.8 Flashのlowか3.5 Flash-Liteから始め、評価用の例を数十件用意して、まず指示の側を詰める進め方をおすすめします。
Gemini APIの料金と無料枠の読み方
使うモデルの見当がついたら、次は費用です。ここでは、Gemini APIの料金表を読むときに見落としやすい3点を整理します。
料金は100万トークン単位で、思考トークンは出力に含まれる
Gemini APIの料金は、入力と出力のトークン数に、モデルごとの100万トークンあたりの単価を掛けて決まります。料金ページの出力単価には「including thinking tokens」と書かれており、思考トークンは出力と同じ単価で課金されます。
最初の呼び出しの例で計算すると、入力18トークン、出力82トークン、思考366トークンでした。3.8 Flashの単価では、入力が0.0000135ドル、出力と思考の合計448トークンが0.00168ドルで、1回あたり約0.0017ドルです。費用の8割は、画面に表示されない思考トークンが占めていました。

料金表では、次の点もあわせて確認しておきます(2026年9月時点)。
- 3.8 Flashの単価は2026年12月31日までの価格で、2027年1月1日からは入力1.50ドル・出力7.50ドルに上がると明記されている
- すぐに結果が要らない処理は、Batch(一括処理)とFlexで単価がおよそ半分になる
- 応答を優先させるPriorityは、単価が標準の1.8倍になる
- Google検索によるグラウンディングは有料枠で使え、Gemini 3系のモデル全体で月5,000件までは無料、その後は1,000件あたり14ドルかかる
無料枠の上限はGoogle AI Studioで確認する
Gemini APIの無料枠を検索すると、「1分あたり何回」「1日何回」という数値を並べた記事が多く見つかります。ただ、2026年9月時点の公式のレート制限ページには、モデルごとの上限値の一覧が載っていません。上限値はGoogle AI Studioの画面で、自分のプロジェクトの値として確認する方式になっています(出典:Rate limits)。
公式ページから読み取れる無料枠の決まりは、次のとおりです。
- 制限は1分あたりのリクエスト数(RPM)、1分あたりの入力トークン数(TPM)、1日あたりのリクエスト数(RPD)で測られ、どれか1つを超えるとエラーになる
- 制限はAPIキーではなくプロジェクト単位でかかる。キーを増やしても上限は増えない
- 1日あたりの回数は、太平洋時間の0時(日本時間の16時または17時)にリセットされる
- プレビュー版や実験版のモデルは、制限が厳しくなる
- 3.1 Pro Previewは無料枠の対象外
無料枠のまま検証を進める場合は、まずGoogle AI Studioで自分のプロジェクトの上限を確認します。そのうえで、429エラー(上限超過)が返ったら待って再試行する処理をコードに入れておくと、検証が止まりません。
有料枠は前払いが基本になった
有料枠に移るには、Google AI Studioの「Set up billing」から請求先アカウントを紐づけ、最低5ドル(または相当額)を前払いします(出典:Billing)。前払いの仕組みで注意したいのは次の3点です。
- 前払いの残高が0ドルになると、その請求先アカウントに紐づくすべてのプロジェクトのキーが同時に止まり、HTTP 402エラーが返る
- 購入したクレジットは12か月で失効し、返金されない
- 請求への反映に約10分の遅れがあるため、一括処理やエージェントのような長い処理は、残高を超えて消費することがある
有料枠の中にも段階(Tier)があり、累計の支払額と経過日数で自動的に上がります。Tier 1は請求先アカウントの紐づけで入れて上限250ドル、Tier 2は100ドルの支払いから3日で上限2,000ドルです。加えて、10分あたりの利用額にも上限があり、Tier 1なら10ドルを超えると429エラーになります。本番で大量に処理する前に、今どのTierにいるかをGoogle AI StudioのProjects画面で確かめておくと安心です。
ここまでGemini APIのモデルと料金を解説しましたが、「指示やモデルを変えたときの差を、自分で測って決められるようになりたい」という方は、Craft Collegeをご覧ください。
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Gemini APIとGemini Enterprise Agent Platform(旧Vertex AI)の違い
有料枠の話が出たところで、もう1つの入口と比べておきます。「Gemini API Vertex AI 違い」で調べる方は多いのですが、Vertex AIは現在、Gemini Enterprise Agent Platformという名前に変わっています。Google Cloudの製品ページでも「formerly Vertex AI」と書かれています(出典:Gemini Enterprise Agent Platform)。
どちらからもGeminiのモデルを呼べますが、入口としての性格が違います。
| 比べる点 | Gemini API(Gemini Developer API) | Gemini Enterprise Agent Platform |
|---|---|---|
| 管理する画面 | Google AI Studio | Google Cloudのコンソール |
| 認証 | APIキー(auth keys) | Google Cloudのサービスアカウント |
| 料金 | Gemini APIの料金ページ(前払いが基本) | Agent Platformの料金ページ(公式が「価格は異なる場合がある」と明記) |
| 学習への利用 | 無料枠は製品改善に使われる。有料枠は使われない | 事前の許可や指示なしに学習へ使わない |
| 使えるモデル | Geminiのモデル | Geminiに加え、他社モデルやオープンモデルを含む200以上 |
| 向く場面 | 試作から本番まで、まず早く作りたいとき | 既存のGoogle Cloud環境で、権限管理・リージョン・監査の要件に合わせたいとき |
この表から読み取れるのは、モデルの違いではなく、管理と契約の違いで選ぶという点です。公式ドキュメントも、特別な企業向けの管理が必要な場合を除いて、多くの開発者にはGemini APIを勧めています(出典:Gemini Developer API vs. Gemini Enterprise Agent Platform)。
コードの差は小さく、同じgoogle-genaiのSDKで、クライアントの作り方だけが変わります。次は公式ドキュメントに載っている例で、本記事では実行していません(Agent Platform側の認証情報を用意していないため)。
from google import genai
client = genai.Client(
vertexai=True, project="your-project-id", location="us-central1"
)

Gemini APIからAgent Platformへ移るときは、認証をサービスアカウントに替えること、使えるリージョンが違うこと、Google AI Studioで作ったモデルは作り直しになることを確認しておきます。つまり、まずGemini APIで作り、組織の管理要件が固まった段階でAgent Platformへ移る進め方でも、コードの書き直しは最小限で済みます。
Gemini APIを業務で使うときのデータの扱い
どちらの入口を選んでも、社内のデータを流す前に条件を確かめる必要があります。Gemini APIでは、同じAPIでも無料枠と有料枠でデータの扱いがはっきり分かれます。
無料枠に入れたデータは製品改善に使われる
Gemini APIの追加利用規約(2026年3月23日発効)は、無料で提供されるサービスを「Unpaid Services」と呼び、Google AI Studioの画面での利用とGemini APIの無料枠がこれに当たるとしています。そのうえで、入力した内容と生成された応答を、Googleの製品や機械学習技術の提供・改善・開発に使うと定めています(出典:Gemini API Additional Terms of Service)。
品質改善のために人のレビュアーが入出力を読むこと、その際にはアカウントやAPIキーとの結びつきを切ることも書かれています。規約には次の一文があります。
Do not submit sensitive, confidential, or personal information to the Unpaid Services.
無料枠には、機密情報や個人情報を入れないでください、という意味です。社内の顧客データや未公開の資料を試しに流すなら、その前に有料枠へ切り替えておく必要があります。
一方、有料枠(Paid Services)では、入力や応答を製品改善に使わないと定めています。有料扱いになる条件は、有効な請求先アカウントに紐づくGoogle Cloudプロジェクトを通じてアクセスしていることです。Google AI Studioの画面も、使っているアカウントが請求先アカウントのあるプロジェクトにアクセスできる場合は有料扱いになります。

有料枠でも保存されるデータがある
有料枠なら何も残らない、というわけではありません。規約と公式ドキュメントから、有料枠でも保存されるものを整理すると次の3つです。
- 不正利用の検知のためのログ:禁止されている使い方を見つける目的に限って、プロンプトと応答を限られた期間記録する
- Interactions APIの保存:既定の
store=trueのままだと、有料枠で55日、無料枠で1日保存される。有料枠では、保存期間をGoogle AI Studioで7・14・28・55日から選べる - Google検索によるグラウンディング:検索結果を作るために、プロンプトと出力を30日間保存する
Interactions APIの保存は、会話の続きを previous_interaction_id で扱う機能や、長い処理をバックグラウンドで走らせる機能に使われます。これらを使わない処理では、本記事のコードのように store=False を付けておくと、保存されるものを減らせます。
公表されているAPIキー流出と情報入力の事例
データの扱いと並んで問題になるのが、APIキーの管理と、社員が何を入力するかです。公表されている事例を2つ紹介します。
1つ目は、セキュリティ企業のTruffle Securityが2026年2月25日に公表した調査です。公開Webサイトに埋め込まれていたGoogleのAPIキーのうち、約3,000件がGemini APIの認証にも使える状態でした。地図表示などのために公開してよいとされてきたキーが、同じプロジェクトでGemini APIを有効にしたことで、アップロード済みのファイルや利用料金にまで届く資格情報になっていたという内容です(出典:Truffle Security)。同社は2026年6月29日の続報で、Googleがauth keysへの切り替えを発表したこと、キーを盗まれて48時間で8万2,000ドルの請求を受けた開発者の報告があったことを紹介しています(出典:Truffle Security)。前の章で見たキーの切り替えは、この問題への対応です。
2つ目は、Samsung Electronicsが2023年5月に、会社支給の端末での生成AIツールの利用を一時的に制限した件です。社員が社内の機密データをChatGPTに入力したことが発端で、制限の対象にはGoogleのBardも含まれていました(出典:TechCrunch、CNBC)。
どちらも、モデルの性能ではなく、キーと入力の管理で起きた問題です。
業務でGemini APIを使う前に確認する5つの手順
ここまでの内容を、社内で使い始める前の手順にまとめます。担当は、開発を進める人と、Google Cloudの請求や権限を管理する人(情報システム部門など)を想定しています。
- 請求の管理者が、プロジェクトを有料枠にする:業務データを流すプロジェクトに請求先アカウントを紐づけ、前払いを済ませる。Google AI StudioのProjects画面で、無料枠のままになっていないことを確かめる
- 開発者が、キーをauth keysで発行し直す:キーは環境変数かシークレット管理の仕組みに置き、ブラウザで動くコードやリポジトリに書かない。同じプロジェクトに古い標準キーが残っていれば、棚卸しして削除する
- 開発者が、保存の設定を決める:Interactions APIでは、会話の続きを使わない処理に
store=Falseを付ける。保存する場合は、Google AI Studioで保存期間を用途に合う最短の値にする - 請求の管理者が、費用の見張り方を決める:前払いの残高と自動チャージの設定、Google AI Studioの利用量の画面(Dashboard の Usage)を確認する担当と頻度を決める。残高切れで全キーが止まる点も共有しておく
- 業務部門と情報システム部門が、入力してよいデータを決める:顧客の個人情報や未公開の資料を社外のAPIに送ってよいかを、データの種類ごとに決める。社外に出せないデータがある場合は、Agent Platformの利用や、社内で動かすローカルLLMを候補にする
社外にデータを出さずにLLMを動かす選択肢については、以下の記事で比較しています。
参照記事:ローカルLLMとは?メリット・デメリットから分かるクラウドLLMとの選定基準
まとめ
- Gemini APIは、GoogleのGeminiモデルをプログラムから呼ぶ窓口で、キー・課金・利用量はGoogle AI Studioで管理する
- 2026年5月28日以降のキーはauth keysで、2026年9月に従来の標準キーは拒否される。新規の呼び出しはInteractions APIが推奨されている
- モデルは3.8 Flashか3.5 Flash-Liteから始め、thinking_levelで考える量を決める。実測では、思考トークンが費用の大半を占めた
- 判断の基準を指示に1行足すと、最安のFlash-Liteでも正解9件中9件になった。上位モデルに替える前に、指示を詰めるほうが安く済む
- 無料枠の上限はGoogle AI Studioで確認する。有料枠は最低5ドルの前払いで、残高が0になると紐づく全キーが止まる
- Vertex AIはGemini Enterprise Agent Platformに名前が変わった。モデルではなく、管理と契約の要件で入口を選ぶ
- 無料枠の入出力は製品改善に使われ、人が読むこともある。業務データは有料枠で、保存設定とキーの管理を決めてから流す
Gemini APIを使ったAI開発は「リベルクラフト」へ
「Gemini APIの呼び方は分かったが、自社の業務に組み込むとなると、評価の仕方やデータの扱いまで自分1人で決めきれるだろうか」と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
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リベルクラフト本体では、AI開発・データサイエンス開発の支援も行っています。Gemini APIをはじめとするLLMを使った社内システムについて、要件定義からPoCでの精度検証、本番運用での費用と品質の監視までを、現役のデータサイエンティストが伴走して支援しています。どのモデルと入口を選ぶか、どのデータを流してよいかを決める段階からご相談いただけます。
- Gemini APIで作った試作を、業務で使える品質まで上げたい方
- モデルや指示を変えたときの精度と費用を、評価データで比べて決めたい方
- 社内データを社外のAPIに流してよいか、構成から相談したい方

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この記事を書いた人
慶應義塾大学で金融工学を専攻。 卒業後はスタートアップのデータサイエンティストとして、AI・データ活用コンサルティング事業などに従事。 その後、株式会社セブン&アイ・ホールディングスにて、小売・物流事業におけるAI・データ活用の推進に貢献。 株式会社リベルクラフトを設立し、AIやデータサイエンスなどデータ活用領域に関する受託開発・コンサルティングや法人向けトレーニング、教育事業を展開。