医療AIの活用例7選と導入の進め方。生成AI・医療事務の使いどころとメリット・デメリット

医療AIの活用例7選と導入の進め方。生成AI・医療事務の使いどころとメリット・デメリット

「他の病院が生成AIで退院サマリーを作っていると聞くが、自院で始めてよいのか判断がつかない」という方も多いでしょう。医療AIの事例は年々増えており、2026年度の診療報酬改定でも生成AIの活用が評価の対象になりました。

しかし、医療の現場では、そのAIが医療機器に当たるのか、患者情報を入力してよいのか、誤りがあったときに誰が責任を負うのか、という確認を飛ばせません。ここが曖昧なまま進めると、導入の途中で止まってしまいます。

そこで本記事では、

  • 医療AIの活用領域と、医療機器になるAI・ならないAIの線引き
  • 承認済みの製品と病院が公表した活用例7件、生成AIと医療事務の使いどころ
  • メリット・デメリット、2026年9月時点の制度とガイドライン、導入の6ステップ

についてわかりやすく解説します。医療機関のDX担当や、医療機関向けにシステムを提供する企業の企画・開発担当の方は、ぜひ最後までご覧ください。

なお、本記事は公的資料と公表事例を紹介するもので、診断や治療に関する助言や、個別の製品が医療機器に当たるかどうかの判断をするものではありません。

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医療AIとは。AI医療の活用領域と、医療機器になるAI・ならないAI

医療AIとは、AI(人工知能)を使って医療の質を高めたり、医療従事者の業務を効率化したりする取り組みの総称です。「AI医療」と呼ばれることもあります。まず、どの領域で使われているかと、医療機器として規制されるAIの範囲を押さえます。

医療AIの主な活用領域

医療AIの使われ方は、診療そのものを支援する領域と、診療の周りの業務を効率化する領域に分かれます。代表的な領域を表にまとめました。

活用領域主な用途医療機器に当たりうるか
画像診断支援内視鏡・X線・CTなどの画像から病変の候補を示す当たりうる(承認済みの製品が多い)
検査・診断支援画像や問診情報から疾患の可能性を示す当たりうる
問診来院前後の問診をタブレットなどで行い、内容を文章にまとめる使用目的による
医療文書の作成電子カルテの情報から退院サマリーや紹介状の下書きを作る使用目的による
医療事務文書の入力補助、診療報酬の算定確認、院内の問い合わせ対応当たらないことが多い
創薬薬の候補となる分子や抗体の配列を探す研究開発の工程で使われる

この表から読み取れるのは、同じ「医療AI」でも、診断に近いほど医療機器としての規制がかかりやすいという点です。一方で、文書作成や医療事務は、使い方しだいで医療機器に当たらない形でも導入できます。

医療AIの活用領域マップ。診療を支援する領域と、診療の周りの業務を効率化する領域

医療機器になるAIと、ならない業務AI

医薬品医療機器等法(薬機法)で規制される医療機器プログラムとは、医療機器としての目的を持ち、意図したとおりに機能しない場合に患者の生命や健康に影響を与えるおそれがあるプログラムを指します(人の生命や健康に影響を与えるおそれがほとんどないものは除かれます)(厚生労働省「医療機器プログラムについて」)。SaMD(Software as a Medical Device)とも呼ばれます。

医療機器に当たるかどうかは、技術の種類ではなく、使用目的で決まります。医療AIプラットフォーム技術研究組合(HAIP)の「医療・ヘルスケア分野における生成AI利用ガイドライン(第2版)」も、生成AIの出力を患者の医学的判断に使う場合、その生成AIは医療機器に該当すると整理しています(HAIP 第2版・2025年7月11日)。

つまり、自院や自社のAIが「診断や治療の判断に使うもの」か「業務の下書きや整理に使うもの」かを最初に分けることが、医療AIの検討の出発点になります。

医療機器になるAIとならない業務AIの分かれ道。AIの出力を診断や治療の判断に使うなら医療機器に当たりうるため承認済みの製品を選ぶかPMDAに相談し、業務の下書きや整理に使うなら使用目的と利用規約を確かめる

医療でAI活用が進む背景

医療でAI活用が進む理由の1つは、医師の働き方改革です。2024年4月から勤務医の時間外・休日労働に上限規制が適用され(厚生労働省「医師の働き方改革」)、文書作成などの事務作業をどう減らすかが病院の課題になっています。

もう1つは制度の後押しです。令和8年度診療報酬改定では、生成AIを活用した文書作成補助システムなどを組織的に使う病院について、医師事務作業補助者の配置人数を多く数えられる仕組みが入りました(詳しくは後述します)。業務の効率化にAIを使うことが、病院経営の面でも評価される段階に入っています。

医療AIの活用例7選。承認済み製品と病院の公表事例

ここまで医療AIの領域と線引きを整理しました。次に、実際に承認や導入が公表されている医療AIの活用例を7件見ていきます。いずれも企業や病院の公式発表から引いています。

1. 画像診断支援。大腸内視鏡AI「EndoBRAIN」(サイバネットシステム)

サイバネットシステムは、大腸の超拡大内視鏡画像をAIで解析し、医師の診断を支援するソフトウェア「EndoBRAIN」を開発しました。

  • 2018年12月6日に医薬品医療機器等法の承認を取得(クラスⅢ・高度管理医療機器、承認番号23000BZX00372000)
  • 昭和大学横浜市北部病院・名古屋大学大学院との共同研究で、AMEDの支援を受けて開発
  • オリンパスが2019年3月8日に発売。内視鏡分野で国内初の薬事承認を取得したAI製品

出典:サイバネットシステム プレスリリース(2018年12月10日)、オリンパス ニュースリリース

画像診断支援は、医療AIの中でも承認の実績が積み上がっている領域です。

2. 検査。AI搭載のインフルエンザ検査機器「nodoca」(アイリス)

アイリスの「nodoca」は、専用カメラで撮影した咽頭(のど)の画像と、体温や自覚症状などの情報をAIが解析するインフルエンザ検査機器です。

  • 厚生労働省が定める「新医療機器」として承認
  • 2022年12月1日から公的保険の適用対象になり、保険点数は305点。AI医療機器を使った診断が「新機能・新技術」の区分で保険収載された日本初の例
  • 2025年10月2日には、新型コロナウイルス感染症の判定機能も承認を取得

出典:nodoca 製品サイト、アイリス プレスリリース(2022年9月14日)、アイリス プレスリリース(2025年10月9日)

製品サイトには、判定結果だけで診断せず、臨床症状などと併せて医師が総合的に判断するよう明記されています。承認済みの医療AIであっても、判断の主体は医師です。

3. 紹介状と退院サマリー。NECと東北大学病院の実証

NECと東北大学病院は、生成AIの日本語大規模言語モデル(LLM)を使い、電子カルテなどの情報から医療文書を作る実証を行いました。LLMとは、大量の文章を学習して、文章の生成や要約を行うAIモデルを指します。

  • 一部の診療科の医師10名が協力
  • 紹介状や退院サマリに書く要約文を新規に作る場合と比べ、作成時間を平均47%削減
  • 文章の表現や正確性についても高い評価

出典:NEC プレスリリース(2023年12月13日)

4. 退院時サマリー。藤田医科大学病院の31診療科での運用

藤田医科大学は、株式会社FIXERと共同で、生成AIを使った「退院時サマリー作成支援システム」を開発しました。電子カルテから必要な情報を抜き出し、下書きを作る仕組みです。

  • 2025年2月に6診療科で先行運用し、3月には入院機能を持つ31診療科に拡大
  • 医師170名へのアンケートで、92%が「時間短縮、業務改善につながった」と回答
  • 導入後3カ月の累計短縮時間は約1,000時間

出典:藤田医科大学 プレスリリース(2025年5月27日)

5. 看護サマリー。関西医科大学と相澤病院

生成AIの文書作成は、医師だけでなく看護師の業務にも広がっています。

  • 関西医科大学と日本IBM:3つの附属病院で、看護サマリー・退院サマリー・外来サマリーの作成支援を実運用。看護サマリーは従来の約30分から5分で完了する例がある。AIが作った文章はそのまま診療記録にせず、医療従事者の最終判断を経る運用(関西医科大学・日本IBM プレスリリース(2026年7月8日))
  • 相澤病院:電子カルテベンダーの株式会社ソフトウェア・サービスと共同で検証し、2025年10月に本格運用を開始。5つの病棟の検証で、看護サマリーの作成時間が平均約17分から約6分に短縮(64.0%削減)。月1,000名を超える退院患者の約8割でAIを活用(相澤病院 お知らせ(2026年2月10日))

2つの事例に共通するのは、電子カルテと連動させて、AIの下書きを人が確認してから記録にするという運用です。

6. 院内全職種での生成AI。日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院

日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院は、Ubieの「ユビー生成AI」を院内で導入しました。特定の文書に限らず、全職種の業務で使っている点が特徴です。

  • 導入1年未満で、全職員の75%にあたる1,500名が利用
  • 医師の日常的な利用率は24%
  • 看護の現場では、始業前の情報収集やサマリー作成に使用

出典:Ubie 導入事例(2026年6月30日公開)、Ubie プレスリリース(2025年9月5日)

7. 創薬。中外製薬の抗体創薬支援技術「MALEXA」

医療AIは病院の中だけでなく、薬の研究開発でも使われています。中外製薬の「MALEXA」は、機械学習で抗体医薬品の候補となるアミノ酸配列を提案する技術です。

  • 抗体の「種」となるリード抗体の配列を見つける「MALEXA-LI」と「MALEXA-LO」の2種類の技術がある
  • MALEXA-LIの論文が学術誌「Scientific Reports」に掲載され、既存の抗体と比べて標的への結合強度が1,800倍以上高い抗体の配列を提案できたと報告

出典:中外製薬 ニュースリリース(2021年3月22日)、中外製薬 創薬基盤&技術

AI問診の効果については、厚生労働省の資料に病院の集計があります。医政局総務課の調べでは、AI問診によって1問診あたりの時間が300床規模の民間病院で約10分から6分に、診療所で約12分から約6分に短縮しました。同じ資料では、生成AIによる退院時サマリの作成が、1,000床規模の国立大学病院で1件あたり1時間から20分になった例も示されています(第120回社会保障審議会医療部会 資料1(令和7年10月27日))。

公表された文書作成と問診の短縮例。退院時サマリは60分から20分、看護サマリーは30分から5分と17分から6分、AI問診は12分から6分と10分から6分に短縮した

製造や金融など他の業界のAI活用例は、「業界別AI活用事例10選」で解説しています。

生成AIの医療での使いどころ。医療事務AIと制度の動き

ここまでの活用例の多くは、生成AIによる文書作成でした。そこで、生成AIに絞って、医療のどの業務に向くのか、医療事務でどう使えるのか、制度がどう動いているのかを整理します。

生成AIが向く業務と、慎重にすべき業務

日本医師会のAIの臨床利用に関する検討委員会は、2026年4月の答申で、AIの適用範囲を次の3つに整理しています(日本医師会 答申「AIに関する臨床的課題と生命倫理について」)。

  • 適用可能:文書作成、要約、説明文の下書き
  • 慎重な適用:検査や処方の提案(根拠の提示、医師の確認、監査ログを前提にする)
  • 適用困難:確定診断や救急での最終判断の代替

答申は、文書業務を働き方改革に直結しやすい領域の第一に挙げ、その理由を成果物の検証が比較的しやすいためと説明しています。医療AIを初めて導入する病院が文書作成から始めるのは、この整理とも合っています。

生成AIの医療での適用範囲。文書作成は適用可能、検査・処方の提案は慎重に、確定診断の代替は適用困難

医療事務のAI活用と、令和8年度診療報酬改定

医療事務でのAI活用は、令和8年度診療報酬改定で具体的な評価の対象になりました。医師事務作業補助体制加算とは、医師の事務作業を補助する職員を配置した病院を評価する診療報酬です。この加算で、次のICT機器を組織的に使う場合、医師事務作業補助者1人を1.2人または1.3人として配置人数に数えられるようになりました(厚生労働省 令和8年度診療報酬改定 入院(共通事項))。

  1. 生成AIを活用した医療文書等の文書作成補助システム(どちらの数え方でも必須)
  2. 医療文書用の音声入力システム
  3. 定型的な入力作業を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)
  4. 10種類以上の患者向け説明動画

1のシステムだけを使う場合は1.2人、1に加えて2〜4のいずれかを広く使う場合は1.3人です。要件には、電子カルテ等と連動するものは「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等(いわゆる3省2ガイドライン)に準拠すること、AI技術を用いる製品は「AI事業者ガイドライン」を遵守していること、全ての医師事務作業補助者に操作方法と生成AIの適切な利用に関する研修を行うことが含まれます。

医師事務作業補助体制加算での数え方。生成AIの文書作成補助システムだけなら医師事務作業補助者1人を1.2人、音声入力・RPA・説明動画のいずれかも使えば1.3人として数える

厚生労働省の疑義解釈では、「日常的に活用」の目安を、医師または医師事務作業補助者の過半数が少なくとも毎週使うことと示しました。研修は年1回程度開き、記録を残すこととされ、HAIPのガイドライン第2版の資料を使ってよいとされています(疑義解釈資料の送付について 令和8年4月1日)。医療機関向けにAI製品を提供する企業にとっては、これらの要件を満たす設計になっているかが、製品選定で問われる点になります。

生成AIの医療機器はまだ審査実績がない

生成AIを診断に近い用途で使う場合は、医療機器としての承認が論点になります。PMDA(医薬品医療機器総合機構)は2026年9月に「生成AIを活用した医療機器の審査ポイント(Draft)」を公表し、2027年3月17日まで意見を募集しています(PMDA 審査ポイントに関する意見募集)。

このDraftには、発行時点では生成AIを用いた医療機器の審査実績はないと書かれています(PMDA 審査ポイント(Draft))。出力の正誤をルールで評価しやすい従来の画像認識AIと違い、生成AIは出力が揺らぎ、正誤の判定に解釈の余地があることが課題として挙げられています。2026年9月時点で、診断を目的とした生成AIの医療機器は、評価の考え方を作っている段階だといえます。

AI医療のメリットとデメリット

ここまで、生成AIを中心に医療AIの使いどころを見てきました。導入を判断するために、AI医療のメリットとデメリットを整理します。

医療AIのメリット

公表事例と公的資料から確認できる医療AIのメリットは、次の3つです。

  • 文書作成や問診の時間を減らせる:退院サマリーや紹介状の作成時間を平均47%削減した実証(東北大学病院)や、看護サマリーが約30分から5分になった例(関西医科大学)、AI問診で1問診あたり4〜6分短くなった例が報告されています
  • 文書の質を揃えやすい:同じ形式の下書きから始めることで、作成者による書き方のばらつきを抑えられます
  • 見落としを減らす支援になる:承認済みの画像診断支援AIは、病変の候補を示して医師の確認を助けます

浮いた時間を患者との対話やケアに回せることが、多くの病院が掲げる導入の目的です。

デメリット1. 責任の所在(最終判断は医師)

厚生労働省は、AIを用いた診断・治療支援のプログラムを使って診療する場合も、診断や治療を行う主体は医師であり、医師が最終的な判断の責任を負うと通知しています(医政医発1219第1号 平成30年12月19日)。AIを使えば責任が軽くなるわけではありません。医師がAIの出力を確認する工程を、業務の流れに組み込む必要があります。

デメリット2. 誤りと過信

AIの出力には誤りが含まれます。日本医師会の答申は、AIの正解率が98%でも、1,000の判断項目があれば20項目を誤るという例を挙げ、AIの診療支援は意思決定を代替するのではなく、根拠を示して見落としを減らす設計にすべきだとしています。生成AIがもっともらしい誤りを出す現象(ハルシネーション)の仕組みと対策は、「AIのハルシネーションとは」で解説しています。

デメリット3. 個人情報とセキュリティ

病歴は、個人情報保護法で特に慎重な扱いが求められる「要配慮個人情報」に当たります(個人情報の保護に関する法律 第2条第3項)。個人情報保護委員会は、個人情報を含むプロンプトを生成AIサービスに入力する場合、利用目的の範囲内かを確認し、入力したデータが機械学習に使われないことなどを確認するよう注意喚起しています(生成AIサービスの利用に関する注意喚起等 令和5年6月2日)。一般向けの生成AIサービスに患者情報をそのまま入力する運用は避け、医療情報を扱う前提で作られた環境を使います。入力データの漏洩対策の全体像は「生成AIの情報漏洩対策」を参考にしてください。

デメリット4. コストと特定企業への依存

日本医師会の答申には、画像診断の領域では専門家の最終確認が欠かせないため人件費の削減にならず、AIの利用料の分だけコストが増えるという病院側の指摘も載っています。また、海外企業のAIサービスに大きく依存すると、料金の引き上げや突然の利用制限のリスクがあるとも述べています。導入前に、削減できる時間と費用の見込みを数字で置き、利用するサービスを乗り換えられる設計にしておくことが対策になります。

医療AIで確認する制度とガイドライン(2026年9月時点)

ここまでに挙げたデメリットの多くは、制度とガイドラインで扱いが決まっています。医療AIを導入する前に確認する資料を、2026年9月時点の版で整理します。

薬機法と医療機器プログラムの該当性

AIが医療機器プログラムに当たるかどうかは、厚生労働省の「プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン」で判断します。2026年9月時点の最新は令和5年3月31日の一部改正版で、判断事例をまとめた医療機器プログラム事例データベースは令和8年9月8日に更新されています(厚生労働省「医療機器プログラムについて」)。判断に迷う場合は、PMDAのSaMD一元的相談窓口で、開発中のソフトウェアが医療機器に当たるかを相談できます(PMDA SaMD一元的相談窓口)。

医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第7.0版(3省2ガイドライン)

患者情報を扱うシステムには、いわゆる3省2ガイドラインが関わります。医療機関向けの厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」と、システムやサービスを提供する事業者向けの経済産業省・総務省「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」の2つです。

厚生労働省のガイドラインは、2026年6月に第7.0版が公表されました(厚生労働省 第7.0版)。策定の通知によると、主な改定点は次のとおりです(策定通知 令和8年6月29日)。

  • 小規模な医療機関を想定した「保守委託機関編」を新たに追加
  • クラウドサービスの積極的な活用を推進する旨を追記
  • 二要素認証の対象をクライアント端末とサーバと明確にし、令和9年4月1日時点での対応が難しい医療機関には次のシステム改修での対応を認める
  • パスワードの定期変更の要件を削除し、使い回しの禁止とアカウントロックを追記

事業者向けのガイドラインは、令和7年3月28日に第2.0版へ改定されています(経済産業省 提供事業者向けガイドライン)。

生成AIの利用に関する指針

生成AIについては、医療に特化した公的な法令はまだなく、複数の指針を組み合わせて使います。立場ごとに確認する主な資料を表にまとめました。

立場主に確認する資料(2026年9月時点)
医療機関医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第7.0版、HAIP「医療・ヘルスケア分野における生成AI利用ガイドライン」第2版、個人情報保護委員会の注意喚起
医療機関にシステムを提供する事業者提供事業者における安全管理ガイドライン第2.0版、AI事業者ガイドライン第1.2版
医療機器の開発企業医療機器該当性ガイドライン(令和5年3月31日一部改正)、PMDAの審査ポイント(生成AIはDraft)

この表のとおり、同じ生成AIでも、使う側と作る側で見る資料が違います。AI事業者ガイドラインは総務省と経済産業省が公表している文書で、2026年9月時点の最新は第1.2版(令和8年3月31日)です(AI事業者ガイドライン 第1.2版)。HAIPのガイドラインは、ドキュメントワーク支援や診察・診断支援など8つのユースケースごとにリスクと対策例を示しており、院内ルールを作るときの下敷きになります(HAIP 第2版)。

ここまで医療AIの制度とガイドラインについて解説しましたが、「患者情報を扱う業務で、ガイドラインに沿った生成AIの仕組みを作りたい」という方は、リベルクラフトへご相談ください。

リベルクラフトでは、データを外部に出さない国内完結の閉域環境や、ローカルLLMを使ったAIシステムの構築が可能です。ただ、構築するだけでなく、RAGで院内のマニュアルや規程を参照させ、利用ログと人の確認の仕組みまで設計できるため、現場で使い続けられる医療AIの導入支援が可能です。

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医療AIの導入を進める6つのステップ

制度とガイドラインを押さえたうえで、医療AIの導入を進める順番を6つのステップで示します。医療機関のDX担当が進める場合を想定しています。

医療AIの導入を進める6つのステップ

1. 対象業務を選び、効果の指標を決める

DX担当が診療部門・看護部門・医事課に聞き取りを行い、作成に時間がかかっている文書や入力作業を洗い出します。最初は、退院サマリーや看護サマリーのように、成果物を人が確認しやすい業務を選びます。そのうえで「1件あたりの作成時間」「医師による修正の量」「利用者の割合」など、効果を測る指標を決めておきます。

2. 医療機器に当たるかを確かめる

選んだ業務で、AIの出力を診断や治療の判断に使うかどうかを確認します。使う場合は医療機器に当たる可能性があるため、承認済みの製品を選ぶか、PMDAの相談窓口で確認します。文書の下書きに使う場合も、製品の使用目的の説明と利用規約を読み、医療機器ではないことの表示があるかを確かめます。

3. データの流れと保存場所を設計する

情報システム部門とベンダーが、電子カルテからどのデータをAIに渡し、どこで処理し、どこに保存するかを図にします。HAIPのガイドラインは、入出力データを保存するサーバが国内法の適用を受ける場所にあることを確認するよう求めています。入力データがAIの学習に使われない契約になっているかも、この段階で確認します。機密性の高いデータを社外に出さずに扱う方法は、「ローカルLLMの構築ガイド」で解説しています。

4. 院内ルールを定め、研修を行う

医療情報の管理部門が中心となり、入力してよい情報、出力を確認する担当者、確認の記録方法を院内ルールにまとめます。医師事務作業補助体制加算の算入を目指す場合は、研修を年1回程度行い、受講の記録を残します。社内ルールの項目の立て方は、「生成AIガイドラインの作り方」が参考になります。

5. 小さく検証し、効果と誤りを測る

1つの診療科や病棟に絞って、1〜3カ月ほど試します。ステップ1で決めた指標に加え、AIの下書きにどんな誤りがあったかを記録し、確認の手間が削減時間を上回っていないかを見ます。検証の進め方は「AIのPoCとは」で詳しく解説しています。

6. 本番運用で監査ログを残し、定期的に見直す

対象を広げる段階では、誰が・いつ・どのAIの提案を採用または修正したかを記録します。日本医師会の答申も、根拠の提示・確認点の明示・監査ログを運用の要件に挙げています。ガイドラインや診療報酬の要件は改定されるため、年に1回は院内ルールと契約内容を見直します。

まとめ

本記事では、医療AIの活用領域と公表事例、生成AIの使いどころ、メリット・デメリット、制度と導入の手順を解説しました。要点は次のとおりです。

  • 医療AIは、診断に近い用途では医療機器プログラムとして承認が必要になり、文書作成や医療事務は使い方しだいで医療機器に当たらない形で導入できる。分かれ目は使用目的
  • 承認済みの製品(EndoBRAIN・nodoca)に加え、2023年以降は生成AIによる退院サマリーや看護サマリーの作成支援が複数の病院で運用され、作成時間を半分以下にした効果が公表されている
  • 令和8年度診療報酬改定で、生成AIの文書作成補助システムなどを組織的に使う病院は、医師事務作業補助者を最大1.3人として数えられるようになった。要件には3省2ガイドライン準拠、AI事業者ガイドライン遵守、研修が含まれる
  • デメリットは責任の所在・誤りと過信・個人情報・コストと依存の4つ。AIを使っても最終判断の責任は医師にある
  • 導入は、文書業務から始め、医療機器該当性・データの保存場所・院内ルールを確かめてから小さく検証し、監査ログを残して見直す

医療AIは、規制があるから手を出せない分野ではなく、確認すべき点が明確な分野です。自院や自社で最初に取り組む業務を1つ決めるところから始めてみてください。

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医療を含む業界別のAI活用事例を、「課題・データ・AI・導入前後の変化」の枠組みで整理したウェビナー資料を配布しています。自社の業務にAIを当てはめる視点を、スライドでまとめて確認したい方はご活用ください。

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この記事を書いた人

慶應義塾大学で金融工学を専攻。 卒業後はスタートアップのデータサイエンティストとして、AI・データ活用コンサルティング事業などに従事。 その後、株式会社セブン&アイ・ホールディングスにて、小売・物流事業におけるAI・データ活用の推進に貢献。 株式会社リベルクラフトを設立し、AIやデータサイエンスなどデータ活用領域に関する受託開発・コンサルティングや法人向けトレーニング、教育事業を展開。

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